判例

労働判例の読み方「いじめ・死亡」【ダイヤモンドほか事件】大阪地裁平31.2.26判決(労判1206.81)

0.事案の概要

 この事案は、ホストクラブのホストが、勤務中、自ら大量に飲酒した上、同僚からも飲酒を強要させられ、暴行を受けたうえで放置された結果、急性アルコール中毒で死亡した事案です。裁判所は、暴行のうえ飲酒を強要した主任による不法行為を認め、会社Yの責任を認めましたが、役員らの責任は否定しました。

1.Yの責任

 主任の暴行や飲酒の強要は、主任が起訴されなかったことから、事実認定の問題として争いがあったようですが、最終的にはこれを認定しています。さらに、店内にいた他の従業員も、これに関与したり、異常に気づいて対応すべきだったりしますので、使用者であるYの責任が認められることは、当然の判断です。

2.役員の責任

 他方、役員個人については、飲酒を伴う業務であって、従業員の健康管理の観点から、異常があった場合には直ちに救急車を呼ぶ等の対応を指導すべき義務があったことは認定していますが、実際に、監視カメラやモニターが設置されていたこと、当ホストの異常に気付いた他のホストが救命活動を行い、発見30分後には救急要請がされたこと、を理由に、義務違反はない、と認定されています。

3.実務上のポイント

 従業員のメンタル問題やハラスメント問題などに関連して、役員個人の責任も併せて追及される事案が増えています。役員自身が、当該従業員の管理に直接関わっている事案などで、その責任が認められる事案が比較的問題になりますが、この事案のように、間接的に、安全体制の確立とその運用について責任を問われる事案では、多くの場合、役員の所管によって判断が分かれます。大和銀行事件で、役員の所管に応じた義務が認定される、という判断が示されて以来、裁判所が一貫して採用する判断枠組みです。
 けれども、この事案では、役員内部での所管の違いが特に問題にされていません。従業員の安全に対する配慮義務は、所管によって分けられないという趣旨なのか、このY内部ではそのような所管の違いが明確でなかったことが理由なのか、その理由は明らかでありません。
 結果的に、役員個人の責任が否定されていますので、所管の問題を検討する必要がなかったからかもしれませんが、今後、従業員の安全に対する配慮義務が問題なる場合の役員個人の責任が議論される場合に、より注目されるべき論点です。

※ JILAの研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。
 その中から、特に気になる判例について、コメントします。

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芦原 一郎
芦原 一郎
弁護士法人キャスト パートナー弁護士/NY州弁護士/証券アナリスト 東弁労働法委員会副委員長/JILA(日本組織内弁護士協会)理事 JILA芦原ゼミ、JILA労働判例ゼミ、社労士向け「芦原労判ゼミ」主宰
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