判例

労働判例の読み方「不当労働行為」【セブンーイレブン・ジャパン事件】中労委H31.2.6命令(労判1209.15)

0.事案の概要

 この事案は、セブンイレブンの加盟店達Xからの団体交渉の申入れを、セブンイレブン・ジャパンYが拒否したことが不当労働行為に該当するかどうかが争われた事案です。岡山県労委は、不当労働行為に該当すると判断しましたが、この中労委は、Xには労組法上の労働者性がないとして、不当労働行為に該当しないと判断しました。

1.判断枠組み(ルール)

 まず、最も抽象的なレベルとして、労組法上の労働者は、労契法・労基法上の労働者に加え、「労働契約に類する契約によって労務を供給して収入を得る者で、労働契約下にある者と同様に使用者との交渉上の対等性を確保するために労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められるものをも含む」と示しました。循環論法、と言えなくもないですが、ここから、労組法上の労働者固有の領域を示すキーワードを抽出すると、a)労働契約と類似する契約で、労務提供による収入、b)使用者と交渉上対等でない(対等性確保の必要性がある)、という2点でしょう。
 これを、中労委はさらに具体的な要素を示すことで、判断枠組みをより具体化しています。
 すなわち、①事業組織への組入れ(加盟者が、会社の事業の遂行に不可欠な労働力として、その恒常的な確保のために会社の組織に組み入れられているかどうか)、②契約内容の一方的・定型的決定、③報酬の労務対価性、④顕著な事業者性、の4点を検討するのです。
 この判断枠組みは、従前から示されてきた判断枠組みと同じもの、とされています。
 これらを整理すると、①~③が、従業員性・従属性など、組織の一員としての性格であるのに対し、④が、自分自身が独立しているかどうか、という問題であって、視点が異なります。これは、複合的な性格を持つ場合を想定すれば、役割の違いを理解できます。つまり、本来は自立した事業者(④)であっても、取引契約の内容や運用によっては、取引相手への依存度がどんどん高くなることがあります(①~③)。取引相手への依存度だけ(①~③)で評価してしまうと、依存度の程度だけが問題になってしまい、外延が曖昧になってしまいますが、事業者性(④)を合わせて考慮することにより、両者の兼ね合いでバランスをとることができます。
 例えば、事業者性(④)が小さい場合には、依存度(①~③)が多少小さくても、労働者性が認められるでしょうが、事業者性(④)が大きい場合には、依存度(①~③)も、相当大きくないと、労働者性が認められない、と整理できます。使用者との交渉上、対等化が必要かどうか(b)が重要ですので、事業者性(④)が大きい場合には、自力交渉の期待も高くなることを考慮し、依存度(①~③)が大きくないと、労働者性を認めにくくなりますから、このバランスを考慮した判断枠組みは、合理的と評価できるでしょう。

2.あてはめ

 ところが、あてはめの段階で、中労委は、①事業組織への組入れの中でも、事業者性を考慮しています。つまり、①事業組織への組入れの検討過程で事業者性を考慮し、①該当性を否定しています。
 その結果、②契約内容の一方的・定型的決定と、③報酬の労務対価性は認められる、としつつ、①事業組織への組入れに該当せず、④顕著な事業者性がある、として、全体として労働者性を否定しています。
 本来の判断枠組みの整理に従えば、事業者性は①ではなく④だけで考慮した方が、議論が整理されると思われ、そうであれば、①~③に該当するが、④該当性によって、労働者性が否定される、という整理の方が理解しやすかったと思われます。
 けれども、①組織への組入れの程度と、④小売店主の事業者性の程度は、相互に反作用する関係にありますから、実態を重視した場合には、両者を分断せずに、関連性を考慮して評価した方が、より実態に沿った判断ができる、という長所も理解できます。
 結局、中労委は、理論的で観念的な分かりやすさよりも、実態を直視した自然な事実認定を重視した、と評価することができるでしょう。

3.実務上のポイント

 労契法や労基法の労働者でなければ、直接、法的な権利義務が発生するわけではなく、取引関係に与える影響も間接的になりますが、労組法の労働者となると、団体交渉に誠実に対応しなければならなくなり、ビジネスモデルを、取引先の事業者たちと一緒に作っていく必要が出てきます。
 その意味で、労組法上の労働者性の判断枠組みを理解しておくことには意味があります。
 さらに、例えば、当連載#129で検討した「企業組合ワーカーズ・コレクティブ轍・東村山事件」(東京高裁R1.6.4判決、労判1207.38)では、労契法・労基法上の労働者性に関し、同様に、従属性と事業者性が検討されています。
 つまり、労契法・労基法上の労働者性も、ここでの判断枠組みと同様の判断枠組みが採用されていますので、組合活動などの集団的な問題ではなく、個別従業員ごとの個別の問題であっても、同様に参考になる判断枠組みです。
 現在、様々なビジネスモデルが模索されており、様々な場面で労働者性が争われる状況です。労組法上の労働者性の方が、労契法や労基法よりも広い、ということと、けれども判断枠組みは同様である、ということを理解しておくことで、適切に問題分析するためのツールを1つ、身につけることになるのです。

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芦原 一郎
芦原 一郎
弁護士法人キャスト パートナー弁護士/NY州弁護士/証券アナリスト 東弁労働法委員会副委員長/JILA(日本組織内弁護士協会)理事 JILA芦原ゼミ、JILA労働判例ゼミ、社労士向け「芦原労判ゼミ」主宰
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