時効

亡くなった人の借金は自己破産できる!相続放棄とどっちがいい?

さいむくん
さいむくん
先生、亡くなった人の借金って自己破産できるんですか?

それに、自己破産の手続き中に相続が発生したら相続した財産はどうなるんでしょう?

他にも自己破産の手続き中に亡くなった場合はどうなるのか…自己破産と相続の関係について知りたいんです…。

なるほど。亡くなった人の借金や相続・自己破産の関係を知りたいんだね。

よし、今日は下記の点をわかりやすく解説しよう!

せんせい
せんせい

この記事でわかること

  1. 亡くなった人の借金は自己破産できる?
  2. 自己破産と相続放棄はどっちがおすすめか
  3. 自己破産中に得た相続財産はどうなるのか
  4. 自己破産してる人が亡くなったら借金はどうなるのか?
せんせい
せんせい
今日は亡くなった人の借金と相続、自己破産について広く解説しよう。

もし自分にとって気になる部分があるなら参考にしてみてね!

知らずに損をする前に

亡くなった人の借金は自己破産できます。また、タイミングによっては相続放棄で借金を支払わずに済むかもしれません。

自己破産や相続の不安は弁護士に相談することで、借金をなくしたり、大切な財産を得ることができます。

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この記事の内容
  1. 亡くなった人の借金は自己破産できる?
  2. 亡くなった人の借金を相続した場合の対処法
  3. 自己破産手続き中に相続が発生した場合
  4. 自己破産の手続き中の相続の注意点
  5. 自己破産してる人が亡くなったら相続はどうなる?
  6. 自己破産と相続でわからないことは弁護士に相談を
  7. 亡くなった人の借金や自己破産・相続でよくある質問
  8. まとめ

亡くなった人の借金は自己破産できる?

せんせい
せんせい
家族が亡くなった際に発生するのが相続だよね。

でも相続で得られるのはプラスの財産だけじゃない。亡くなった人の借金を返済する義務まで継承してしまうわけだ。

相続放棄という手続きをすることで、プラスの財産、マイナスの借金、一切合切を相続しないことができる。

ただし、相続放棄は、『家族が亡くなったのを知った時から3ヶ月以内』に手続きが必要だ。

相続放棄ができなかった場合に、検討したい手続きが自己破産だね。

ここでは、亡くなった人の借金を相続してしまった場合に、自己破産できるかどうか、自己破産と相続放棄の違いも交えて解説するね!

亡くなった人の借金を相続する前なら相続放棄がおすすめ

せんせい
せんせい
今話した通り、亡くなった人の借金を相続したくないのなら、相続放棄がおすすめだね。

相続放棄をすることで、借金を返済する義務を相続しなくて済むよ。

相続放棄のメリット・デメリットは次の通り。

相続放棄のメリット
  • 亡くなった人の借金を返済する義務を負わなくて済む
  • 相続争いに巻き込まれずに済む
相続放棄のデメリット
  • 借金だけでなくプラスの財産も相続できない
  • 自分が相続放棄をすると別の人に相続の権利が移るなどして影響がある
注意したいのは、相続放棄の手続きの期間だね。

相続放棄の手続きは、『家族が亡くなったのを知った時から3ヶ月以内』に家庭裁判所に申し立てる必要があるよ。

せんせい
せんせい
さいむくん
さいむくん
じゃあ3ヶ月経ったら放棄できないってことですか?
絶対じゃないし、亡くなった人と疎遠などで借金の存在を知らなかったなどの事情があれば認めてもらえるケースもあるよ。

また、放棄を申し立てる前に、相続する財産の処分などをしてる場合も放棄できない可能性があるから注意してね。

せんせい
せんせい

亡くなった人の借金を相続しても自己破産はできる

せんせい
せんせい
今話したように、相続放棄の手続きには期限があるよね。

「借金なんかないでしょ」って相続した後に、請求が来るケースもある。

亡くなった人の借金を相続してしまった後で請求が来た場合は、自己破産という手続きをとることができるよ。

自己破産は、破産法にさだめられた借金を免除する手続きのこと。

裁判所の許可を得ることで、借金の返済義務をなくしてもらえるんだね。

自己破産のメリット

せんせい
せんせい
自己破産のメリットはいわずもがな、借金の返済義務がなくなることだね。

それも、相続してしまった借金だけでなく、自分の借金や滞納している未払い分もすべて対象になるよ。

自己破産のデメリット

せんせい
せんせい
一方で自己破産にはデメリットもあるんだね。

自己破産のデメリット

  • 一定以上の財産は没収される
  • 自己破産後5~7年は借り入れの審査に通りにくくなる(ブラックリスト) など
自己破産っていうのは、借金の返済義務がなくなる手続きだったよね。

でもこれだけだと、お金を貸した側(債権者)は借金を踏み倒されたままになるし、可哀想だよね。

だから、20万円以上の価値がある財産がある場合は、裁判所に没収されて、換金されて債権者に分配されるんだね。

せんせい
せんせい
ともだち
ともだち
借金が100万円で、財産が500万円もあるなら、「その財産を売って借金を返済しろよ」って債権者にいわれちゃいますもんね。
そうだね。預貯金だけじゃなく、持ち家や車まで対象になるよ。
せんせい
せんせい
ともだち
ともだち
それに自己破産後は5~7年は借り入れの審査に通りにくくなってしまうんですよね。

簡単にいえば、自己破産したことで信用がなくなってしまうってことですね。

そうだね。

このように、借金の返済義務がなくなるのは大きいけど、それなりのデメリットもあるんだね…。

せんせい
せんせい
さいむくん
さいむくん
財産がまったくないなら、そこまで痛くないかもしれませんが…亡くなった人の借金を相続したためにこんな目に遭うのはちょっと嫌ですね…。
そうだね。

自己破産以外の方法も『亡くなった人の借金を相続した場合の対処法』で解説するから参考にしてみてね!

せんせい
せんせい

自己破産と相続放棄の違い

せんせい
せんせい
自己破産と相続放棄は借金の返済義務を負わないって点は同じだよね。

でも、まったく違う手続きなんだよ。

ここでは、自己破産と相続放棄の違いについてもっと掘り下げるよ!

自己破産
  • 裁判所の許可のもと借金の返済義務をなくす手続き
  • 相続した故人の借金・自分の借金も対象になる
相続放棄 プラスの財産・マイナスの財産どちらも放棄する手続き

自己破産

せんせい
せんせい
自己破産と相続放棄を比較したときに、相続放棄と違う点は次の通りだね。
  1. 自己破産は条件を満たせばいつでもできる
  2. 自己破産は税金だけ免除できない
  3. 生活に必要なものだけは手元に残せる
自己破産は条件を満たせばいつでもできる
せんせい
せんせい
相続放棄の場合、『家族が亡くなったのを知った時から3ヶ月以内』に手続きをする必要がある。

でも自己破産は、条件さえ満たしていればいつでも手続き可能だよ。

自己破産の条件は色々あるけど、重要なのは「支払い不能であること」。

この支払い不能というのは、「今すぐ返済しないといけない借金を今後将来的にも支払いができない状態」のこと。

頑張れば借金を返済できるような状態なら、自己破産は利用できないんだね。

自己破産は税金だけ免除できない
せんせい
せんせい
自己破産は、借金の返済義務をなくせる手続きだ。

相続してしまった故人の借金、貸金業者からの借金、個人間の貸し借り、滞納した携帯料金、家賃なども免除される。

ただし、滞納した税金・国民健康保険や年金の未納だけは支払い義務が残るよ(破産法253条)。

だから、自己破産で亡くなった人の借金の支払い義務はなくせるけど、税金の未納分だけは支払い義務が残ってしまうから注意してね。

生活に必要なものだけは手元に残せる
せんせい
せんせい
亡くなった人の借金を相続した場合、借金はもちろんプラスの財産も得ることになる。

でもその後自己破産をすれば、支払い義務がなくなる代わりに20万円以上の価値ある財産は没収されることになるよ。

一方で20万円以下の財産や、生活に必要な家財や寝具、99万円以下の手持ちの現金だけは残せるよ。

これは自己破産が、借金を返済できなくなった人の経済的な再生を目的とした手続きだからね。

借金をなくした後やり直せるように、最低限の財産は手元に残してくれるってわけだ。

相続放棄

せんせい
せんせい
相続放棄と自己破産を比較したときに、自己破産と違う点は次の通りだよ。
  1. 相続放棄は手続きできる期限がある
  2. 相続放棄ならすべての借金を引き継がない
  3. 亡くなった人の財産は一切引き継げない
相続放棄は手続きできる期限がある
せんせい
せんせい
自己破産の場合は、手続きを申し立てればいつでもできる。

でも相続放棄の場合、これまでも散々触れたように手続きできる期限が設けられているよ。

『家族が亡くなったのを知った時から3ヶ月以内』だね。

相続放棄ならすべての借金を引き継がない
せんせい
せんせい
自己破産の場合、相続した亡くなった人の借金、貸金業者や個人から借りた借金、未払いの携帯料金や家賃など、あらゆる借金の返済義務をなくせる。

ただし、住民税などの税金の未納分の免除はできないんだね。

一方で相続放棄であれば、亡くなった人の借金は借りたもの、税金、すべての支払い義務を負わずに済むよ。

亡くなった人の未払い分に税金が多いのであれば、相続放棄のほうがおすすめだね。

亡くなった人の財産は一切引き継げない
せんせい
せんせい
これまで散々話したように、相続放棄をすると、借金はもちろん、プラスの財産があっても引き継ぐことはできないよ。

自己破産の手続きであれば、相続したもの、してないものに関わらず、生活に必要な家財や20万円以下の価値ある財産、手持ちの現金99万円以下までであれば手元に残せるよ。

自己破産と相続放棄はどっちを選ぶべき?

さいむくん
さいむくん
ここまで自己破産と相続放棄について聞いてきましたけど、結局どっちを選ぶべきなんですか?

相続放棄がおすすめなケース

せんせい
せんせい
そうだね。下記に当てはまるなら、相続放棄がおすすめだよ。
  1. 『家族が亡くなったのを知った時から3ヶ月以内』で手続きが間に合う
  2. 亡くなった人には借金しかなかった
  3. 亡くなった人の借金は税金の未納が多い
  4. 自分に借金がない

自己破産がおすすめなケース

せんせい
せんせい
一方で、下記に当てはまるなら、自己破産がおすすめだね。
  1. 相続放棄ができず相続してしまった
  2. 自分にも借金がある
  3. 亡くなった人の借金は貸金業者からの借金ばかりだった

思い入れのある財産だけ残したいなら限定承認

さいむくん
さいむくん
先生、相続財産の中で家だけ相続するとかはできないんですかね…。

やっぱり借金があったら、相続放棄せざるを得ないのかな…。

大丈夫。適した方法があるよ。相続放棄と相続(単純承認)の間ともいえる、限定承認って方法だね。

限定承認ってのは、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産も相続することだよ。

例えば、さいむくんのおじいちゃんが、借金1000万円と、200万円の価値がある自宅を持っていたとしよう。

相続放棄をすれば、借金1000万円は相続しなくて済むけど、200万円の自宅も相続できない。

限定承認をすれば、自宅の価格分の借金は引き受けるけど、残りの借金は放棄することができるんだね。

この場合は、自宅と自宅200万円分の借金をゲットして、残りの借金800万円がチャラになるってことだね。

相続放棄や限定承認は、適したケースがあるから、まずは弁護士に相談してみるのが一番だよ!

せんせい
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亡くなった人の借金を相続した場合の対処法

せんせい
せんせい
亡くなった人の借金を相続してしまった場合の対処法として、自己破産を紹介したけど…実は他の方法もあるんだ。

ここでは、自己破産以外の対処法を紹介するね!

時効援用をする

せんせい
せんせい
自己破産よりも手軽な方法が、時効援用だね。

実は、借金は最後の支払い期日から5年以上支払ってなければ時効になるんだね。

時効援用という手続きをすることで、時効の効果が得られるんだ。

万が一亡くなった人の借金を相続してしまっても、時効であることが確かなら、時効援用という手続きをするだけで、支払う必要がなくなるよ。

時効援用は、時効援用通知書って書類を請求してきた相手に送るだけなので自己破産より手軽ですね!
ともだち
ともだち
せんせい
せんせい
そうだね。それに、自己破産をするとなると費用がかかる。

時効援用であれば、2~5万円程度で弁護士に依頼できるからね。

ただし、時効には時効がリセットするケースもあるから注意が必要だよ。

例えば、請求が来た場合に焦って相手に支払いの相談をすると、時効がリセットされてしまう可能性があるんだ。

もしかなり昔の借金の請求が届いたら、請求先に確認する前に真っ先に弁護士に相談しよう。

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債務整理をする

せんせい
せんせい
亡くなった人の借金を相続した後、時効でなければやはり自己破産をすることになるね。

でも自己破産以外にも借金を減額できる手続きがあるんだ。

自己破産を含めて、借金を減額・免除できる手続きのことを債務整理(さいむせいり)と言うよ。

自己破産以外の債務整理

任意整理
  • お金を貸した側(債権者)と交渉をして利息をカットしてもらう手続き
  • 残った借金は36~60回払いで返済するのが一般的
個人再生 裁判所の許可を得て借金を最大10分の1まで減額できる手続き
任意整理の場合は、弁護士費用も2~5万円程度とリーズナブルだよ。

借金が多い場合は、利息のカット程度では月の返済も苦しいだろう。

借金が数十万円程度ならちょうどいい手続きなんじゃないかな。

せんせい
せんせい
ともだち
ともだち
債務整理をすると、住宅ローンを返済中の場合、支払い能力がないと判断されて、自宅を失うリスクがありますよね。

住宅ローン返済中なら個人再生がおすすめですね。

個人再生なら、借金を大幅に減額できるし、例外的に住宅ローンが残る家を残せますからね。

財産を没収されないのも自己破産とは違う点ですね。

でもどちらも、自分の借金じゃないのに返済しないといけないことには変わりがないんですね…。
さいむくん
さいむくん
せんせい
せんせい
そうだね。だから亡くなった人の借金を相続してしまった場合、時効援用で借金をなくせるのがベスト。

時効でないなら自己破産。自己破産ができないのなら、個人再生や任意整理を検討してもいいかもしれないね。

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借金の悩みを誰かに相談するのは、正直とても不安で緊張していました。

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対応も早くて丁寧でしたのでとても感謝しています。

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自己破産手続き中に相続が発生した場合

せんせい
せんせい
さて、ここから話題をガラっと変えて、自己破産の手続き中に相続が発生した場合、相続した財産がどうなるのかについて解説していくよ。

自己破産のデメリット』でも話したけど、自己破産っていうのは、一定以上の財産を没収する代わりに、借金の返済義務がなくなる手続きだったよね。

この自己破産で没収対象になる財産は、自己破産の手続きが開始された時点のものなんだ。

理解するには自己破産の流れを知っておくとスムーズだよ。

自己破産の流れ

  1. 裁判所に自己破産を申し立てる
  2. 裁判所が自己破産の条件を満たしているか調べる
  3. 自己破産の手続きの開始決定がされる
  4. 財産調査の後、財産が分配される
  5. 借金の免責が認められる

自己破産の手続き開始前:相続財産も処分の対象になる

せんせい
せんせい
自己破産の流れを見てもらうとわかると思うけど、自己破産は、申し立てたら即自己破産の手続きが開始されるわけじゃないんだよ。

自己破産の流れ

  1. 裁判所に自己破産を申し立てる
  2. 裁判所が自己破産の条件を満たしているか調べる
  3. 自己破産の手続きの開始決定がされる
  4. 財産調査の後、財産が分配される
  5. 借金の免責が認められる
自己破産の条件を満たしているか確認した後で初めて『自己破産の手続きの開始決定』になるんだね。

もし③の自己破産の手続き開始決定の前に相続が発生した場合は、相続で得た財産も没収の対象になるよ。

せんせい
せんせい
さいむくん
さいむくん
マジかぁ…。要するに相続した財産が、僕の財産になるわけだから、当然没収されるってことですよね…。

じゃあ相続が発生しそうなら、自己破産の手続きは申し立てないほうがいいんですね…。

うーん、不謹慎だけど簡単にいえばそういうことになるね…。

それに相続した財産で借金が完済できるなら、自己破産も不要になるはずだし。

とはいえ、相続がいつ発生するかなんてわからないことのほうが多いんじゃないかな。

ともだち
ともだち

自己破産をしても財産を残したい場合

せんせい
せんせい
自己破産の手続き開始前に発生した相続で、得た財産は自己破産の没収対象になってしまうよね。

だから例えばせっかく亡くなった人の家などを相続しても、自己破産で没収・換金されてしまうことになる。

もし、思い入れのある家などを、自己破産の手続きで失いたくないのなら、相続放棄をして他の家族に相続してもらう方法もあるよ。

なるほど。でも先生、それって不正行為になりませんか?

自己破産では、債権者が利益を得られないようにする行為は厳しくチェックされますよね。

ちゃんと相続して自己破産の手続きをすれば債権者の取り分は増えるはずです。

ともだち
ともだち

手続き開始前の相続放棄が問題にならない理由

せんせい
せんせい
そうだね。

自己破産では、破産管財人(はさんかんざいにん)って人が財産調査などをする。

債権者が損をするような行為は、不正行為の1つとして破産管財人が厳しくチェックするんだね。

例えば、自分の車が没収・売却されるのが嫌だからって友達にあげちゃうみたいな行為はNGなんだね。

自己破産の手続き開始前であっても、そういう不正行為があれば、破産管財人はその不正行為を取り消す認否権(にんぴけん)ってのを発動できるんだ。

じゃあ、家を相続できるけど、自分は相続放棄をして、他の兄弟に相続させるのは不正行為になっちゃうんじゃないですか?
さいむくん
さいむくん
せんせい
せんせい
相続放棄は、相続人が損をしないための行為であり、債権者を損させるためにやる行為ではないから、不正にはあたらないんだ。

もし相続放棄できなければ、借金を相続した相続人の人生はめちゃくちゃになってしまうでしょう?

それに、破産管財人が選任されるのは、手続き開始後。手続き開始前の相続放棄は問題ないんだね。

自己破産の手続き開始後:処分の対象にならない

せんせい
せんせい
もし自己破産の手続きの開始決定後に相続が発生した場合は、相続で得た財産は没収の対象にはならないよ。

流れの中でいうなら、③の後だね。

自己破産の流れ

  1. 裁判所に自己破産を申し立てる
  2. 裁判所が自己破産の条件を満たしているか調べる
  3. 自己破産の手続きの開始決定がされる
  4. 財産調査の後、財産が分配される
  5. 借金の免責が認められる
③の自己破産の手続きの開始決定後に発生した財産は「新得財産」といって、自己破産の対象外なんだね(破産法34条)。

つまり、手続き開始後に発生したものなら、相続で得た財産はもちろん、ボーナスも退職金も受け取れるんだね。

これは借金でも同じことだよ。自己破産の手続き開始決定後に発生した支払いは、自己破産の対象外ってわけだ。

せんせい
せんせい
さいむくん
さいむくん
相続が発生したタイミングによって、扱いがずいぶん違うんですね…(涙)

自己破産の手続き中の相続の注意点

せんせい
せんせい
今、自己破産の手続き中の相続財産はどうなるのかって点を解説したよね。

他にも、自己破産の手続き中の相続にはいくつも注意点がある。

わかりやすく解説していくから、気を付けてね!

  • 自己破産の手続き開始前の相続は管財事件になる可能性がある
  • 破産管財人が遺産分割協議に参加する
  • 財産を他人に相続させると自己破産が失敗する可能性がある
  • 相続財産によっては自己破産できない可能性がある
  • 手続き開始後の相続放棄は限定承認になる可能性がある
  • 破産後7年は自己破産ができない

自己破産の手続き開始前の相続は管財事件になる可能性がある

せんせい
せんせい
自己破産の手続きは大きく2つに分けられる。
同時廃止事件
  • 財産調査が不要な場合にとられる手続き
  • 手続き期間も短く費用もかからない
管財事件
  • 財産調査が必要な場合にとられる手続き
  • 手続き期間が長く費用もかかる
自己破産を申し立てた後は、この財産調査の要否によって、同時廃止事件か管財事件が決まるわけだ。

今まで話したように、一定以上の財産が没収・債権者に分配される場合は、財産があって調査が必要な「管財事件」のことを指しているよ。

でも財産がないなどの理由で調査が不要なら、同時廃止事件になる。

同時廃止事件なら、財産調査が不要だから手続き期間も短く費用もかからない。

一方で財産があるなど財産調査が必要になるため、手続き期間も費用もかかるんだ。

せんせい
せんせい
ともだち
ともだち
じゃあ、自己破産の手続き開始決定前に財産を相続すると、財産調査が必要になるし、管財事件になる可能性があるってことですね。

自己破産の手続きにも費用と時間がかかる可能性がありますね…。

破産管財人が遺産分割協議に参加する

せんせい
せんせい
もし自己破産の手続き開始決定前に相続が発生した場合は、破産管財人って人が遺産分割協議に参加するよ。

遺産分割協議は、本来相続人たちが行うものだよね。

自己破産の手続きが開始されると、自己破産を申し立てた人の財産は、破産管財人って人が管理することになる。

自分の財産を勝手に処分できなくなるんだ。

相続財産も、自己破産をする人の財産になるわけだから、財産管理を任された破産管財人が遺産分割協議に参加してくるってわけだね。

なんだかちょっと気まずいですね…(笑)
さいむくん
さいむくん

財産を他人に相続させると自己破産が失敗する可能性がある

せんせい
せんせい
さっき話したように、自己破産の手続き開始決定前に相続が発生すると、財産を相続しても没収の対象になってしまうわけだ。
それなら…遺産分割協議で僕の取り分を少なくして、兄貴の取り分を増やして、後からもらえばいいんじゃないですかね?
さいむくん
さいむくん
せんせい
せんせい
その行為がアウトなんだよね。

実はさいむくんのように考えて、実際に実行しちゃった前例があるんだけど…後から債権者に訴えられたんだね。

裁判年月日 平成11年 6月11日 裁判所名 最高裁第二小法廷 裁判区分 判決
事件番号 平10(オ)1077号
事件名 貸金及び詐害行為取消請求事件
裁判結果 上告棄却 文献番号 1999WLJPCA06110002

【参考:最高裁判所判例集 – 裁判所

自己破産の手続きには色々決まりがあって、不正行為や、債権者が利益を得られないようにする行為などは厳しくチェックされる。

これは『手続き開始前の相続放棄が問題にならない理由』でも話したよね。

せんせい
せんせい
さいむくん
さいむくん
でも相続放棄はOKで、遺産分割協議で他の兄弟に相続させるのはNGなんて変じゃないですか?
相続放棄自体は、自分が損をしないためにする行為だよね。

でも遺産分割協議で他人に相続をさせるのは、債権者が利益を得られないようにした行為だと判断されてしまうんだね。

変かもしれないけど、不正行為だと判断されて自己破産できない可能性があるから注意が必要だよ。

自己破産は、弁護士に依頼して行っているはず。わからないことは依頼した弁護士に相談しようね。

せんせい
せんせい
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私は、電話が苦手で借金の悩みをなかなか相談できず困っていました。

ただ、LINEは電話に比べて緊張しないので、少しだけ勇気を持ってLINEボタンをクリックして専門家に相談したところ借金を当時の3分の1まで減らすことができたんです! 今では、借金に悩まず、元気に生活できるようになりましたね!

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相続財産によっては自己破産できない可能性がある

せんせい
せんせい
また、相続した財産によっては、自己破産できない可能性があるよ。

例えば、借金が100万円あったけど、相続財産が1000万円あった場合は、借金は返済できるわけだからね。

自己破産は条件を満たせばいつでもできる』でも触れたけど、自己破産の条件は「支払い不能であること」。

「今すぐ返済しないといけない借金を今後将来的にも支払いができない状態」だったよね。

もし条件を満たせず自己破産ができないって場合は『債務整理をする』で解説した任意整理や個人再生を検討する方法もあるよ!

手続き開始後の相続放棄は限定承認になる可能性がある

せんせい
せんせい
例えば、手続き開始決定前に相続が発生して、手続き開始後に相続放棄を選択すると、破産管財人の判断で限定承認になる可能性があるよ。

さっきの自己破産の流れを見ながら話そう。

自己破産の流れ

  1. 裁判所に自己破産を申し立てる
  2. 裁判所が自己破産の条件を満たしているか調べる
  3. 自己破産の手続きの開始決定がされる
  4. 財産調査の後、財産が分配される
  5. 借金の免責が認められる
③の前に相続が発生して、③の後に相続放棄を選択すると、破産管財人の判断で限定承認になる可能性があるってことだね。
せんせい
せんせい
さいむくん
さいむくん
なるほど。

それって、相続の発生時期は手続き開始前だから、手続き開始後に相続放棄をしても、自己破産で没収される財産の対象になるってことですよね?

でも、手続き開始前なら相続放棄できるのに、手続き開始後だと相続放棄じゃなくて限定承認することになるのはどうしてなんですか?

破産管財人が遺産分割協議に参加する』でも話したけど、③の手続きが開始決定されると、自己破産を申し立てた人の財産は、破産管財人って人が管理することになる。

手続き開始決定前なら、相続した財産は相続人が相続放棄できるんだね。

手続きが開始されると、財産の処分は破産管財人が行うことになる。

相続放棄をすることでプラスの財産もすべて放棄してしまうと、債権者が得られる利益が減ってしまうよね。

だから相続放棄を選択したとしても破産管財人の判断で限定承認にされる可能性があるということだね。

この辺の説明はとてもややこしくて難しいから、もし手続き開始決定後に相続放棄をすることになりそうな場合は、一度弁護士に相談してね!

せんせい
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せんせい
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せんせいは、これまでたくさんの借金にお悩みの方の問題を解決してきました。

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破産後7年は自己破産ができない

せんせい
せんせい
注意してほしいのは、自己破産後は7年経過しないと、再び自己破産をすることはできない点だね(破産法252条)。

要するにこれは、「ホイホイ自己破産は認めませんよ」ってことだね。

どんな借金でも返済できないならと簡単に自己破産を認めまくっていたら、世の中の債権者は損ばかりすることになる。

だから、条件が設定されていたりするわけだ。

自己破産は人生で一度きり、その後は同じ間違いを起こさないように生活を改善するようにってことなんだね。

だから自己破産した後に、借金を相続してしまうと、7年経過しない限りは自己破産ができないから注意しよう。

ええ~…それこそ、相続がいつ発生するかなんてわかりませんよ?
さいむくん
さいむくん
せんせい
せんせい
そうだね。自己破産後に相続が発生して、借金ばかりなのであればすぐに相続放棄をした方がいい。

最悪自己破産ができなくても、時効援用や任意整理といった方法があるから、焦らず弁護士に相談してみてね!

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自己破産してる人が亡くなったら相続はどうなる?

せんせい
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さて、ここからは話題をガラっと変えて、自己破産をしてる人が亡くなった場合、借金や相続はどうなるのかわかりやすく解説しよう!
確かに…もし僕の親父が自己破産中に亡くなったら…その借金って僕に相続されちゃうんですかね…?
さいむくん
さいむくん

自己破産の手続き開始決定前の死亡:破産手続きは終了

せんせい
せんせい
さて、自己破産の手続きを申し立ててから開始決定までの間に、もし申し立てた人が亡くなってしまった場合…自己破産の手続きは終了することになるよ。

手続きの開始が決定してないわけだから、借金も財産もそのまんま。

だから通常の相続に切り替わることになるね。

なお、相続人や亡くなった人から支払いの約束を受けていた債権者、贈与などで支払いの約束を受けていた受遺者(じゅいしゃ)などが破産の続行を申し立てると、手続きが続行されるみたいだね(破産法226条)。

もっともこういうケースでは、相続人などがわざわざ続行を申し立てなくても、相続放棄をすれば事足りるからあまりないケースだね。

つまり、手続き開始前ならまだ自己破産は始まってないので、通常通り相続の手続きをすればいいんですね。
ともだち
ともだち

自己破産の手続き開始決定後の死亡:破産手続きのみ行われる

せんせい
せんせい
一方で、自己破産の手続きが開始された後に亡くなった場合は、破産手続きのみ行われることになるね。

破産手続きっていうのは財産の処分や、換金、債権者へ分配することだね。

実は、自己破産の手続きは、破産と免責で構成されているんだ。

破産 申し立てた人(債務者)の財産を没収して売却。債権者に分配する手続き
免責 借金の返済義務をなくすかどうか裁判所が決める手続き
じゃあ、破産だけ行われるってことは、プラスの財産があっても債権者に分配されちゃってる可能性があるってことですね…。
ともだち
ともだち

自己破産してる人が亡くなっても免責はされない

さいむくん
さいむくん
あれ?ということは…破産はされるんですよね。債権者に財産が分配されるってことですね。

でも免責はされないってことですか?

その通り。免責っていうのは、裁判所が返済義務をなくすかどうか決める手続きなんだ。

でも免責するかどうか決めるにしても当の本人は亡くなってしまってる。

だから免責はされないんだね。

せんせい
せんせい
さいむくん
さいむくん
じゃあ借金の返済義務は残ったままだし、それが僕らに相続されるってことですか?
その通りだね。

もちろん、債権者に分配された分借金は減ることになるけど、足りない分は相続人に請求されることになるんだ。

だから自己破産の手続きの開始決定後に亡くなった場合は、相続放棄をしないとダメだよ。

せんせい
せんせい

自己破産と相続でわからないことは弁護士に相談を

せんせい
せんせい
さて、ここまで亡くなった人の借金や自己破産、相続や相続放棄について色々と話してきたけど…自己破産や相続でわからないことがあれば弁護士に相談するのがベストだよ。

自己破産は破産法、相続は民法で決められているし、別々の法律で複雑なんだ。

相続放棄をするにしても、期限が過ぎてしまうと認められなかったり、別の手続きを検討しなきゃいけなかったりする。

また財産調査をしてみると、実はプラスの財産があったり、過払い金があったりするケースもあるんだ。

でも相続放棄や自己破産のタイミングによっては、自分が得られた財産を失いかねない。

だからこそ、自分にメリットがあるかどうか、手続きをするタイミングはいつがベストなのか、弁護士に相談するのがおすすめだね。

確かに…。

最近の法律事務所は無料相談を受けている所も多いし…無料で相談してみたら、自分にとってメリットのある提案を受けられるかもしれないもんな…。

最近はLINEで手軽に相談できる所もあるみたいだし…ちょっと聞いてみようかな!

さいむくん
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せんせい
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亡くなった人の借金や自己破産・相続でよくある質問

せんせい
せんせい
さて、最後にオマケとして、亡くなった人の借金や自己破産、相続でよくある質問に答えるよ!

自己破産中に相続が発生した、相続した財産は没収される?

せんせい
せんせい
これは『自己破産手続き中に相続が発生した場合』でも解説したけど、下記の通りだよ。
自己破産の手続き開始前 自己破産の没収の対象になる
自己破産の手続き開始後 自己破産の没収の対象にならない
自己破産の手続きが開始される前の財産は、自己破産の没収の対象になるから注意が必要だよ。

一方で手続きが開始された後なら、「新得財産」といって、自己破産の没収の対象外になるよ。

せんせい
せんせい

亡くなった家族が連帯保証人だった、自己破産できないのか?

せんせい
せんせい
亡くなった家族が実は借金の連帯保証人だった場合、連帯保証をした借金は相続人が引き継ぐことになるよ。

この連帯保証をした借金は、法定相続分に応じて分担することになる。

連帯保証人として借金を相続するなんて最悪ですね…。
さいむくん
さいむくん
せんせい
せんせい
そうだね。

でもこの連帯保証の借金も、自己破産はもちろん、相続放棄も時効援用もできるからね。

もし相続してしまった場合は、まず時効援用を検討して、ダメなら自己破産をするのがいいかもしれないね。

親が自己破産をして亡くなった場合財産は相続される?

せんせい
せんせい
これも『自己破産してる人が亡くなったら相続はどうなる?』で解説したけど、自己破産の手続き中に亡くなってしまった場合は、基本的に相続が行われると考えよう。
自己破産の手続き開始前に亡くなった場合 自己破産の手続きは中止になるので、財産も借金もそのまま相続される
自己破産の手続き開始後に亡くなった場合 財産は債権者に分配される

借金の返済義務だけ残るので相続放棄などを手続きをする必要がある

プラスの財産がほとんどないなら、相続放棄をしたほうがいいですね。
ともだち
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せんせい
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まとめ

ともだち
ともだち
ふう…今日は結構難しい内容だったね!じゃあまとめるよ!
まとめ
  • 亡くなった人の借金を相続してしまったら自己破産で返済義務をなくせる
  • 相続放棄の期限内であれば相続放棄がおすすめ
  • 亡くなった人の借金を相続してしまった場合時効の可能性がある
  • 自己破産の手続き開始前に相続した財産は、自己破産の没収対象になる
  • 自己破産の手続き中に亡くなった場合は、借金が相続される可能性がある
  • 自己破産や相続放棄でわからないことは弁護士に相談する
相続が発生するタイミングによっても、相続放棄と自己破産、どれがいいのかは異なるよ。

仮に借金を相続してしまっても、自己破産や時効援用という方法で借金を払わずに済む可能性がある。

それ以外でも自己破産や相続放棄、相続財産でわからないことがあれば、損をしてしまう前に弁護士に相談してね!

せんせい
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著者情報

この記事の監修者
赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

監修者の詳細なプロフィール
この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。

20代後半に作ってしまった借金100万円を自力で完済した。

筆者の詳細なプロフィール