ただし、資金調達が難しいなどの注意点もあるから、今回は自己破産後の起業について解説しよう。
「今の借金が自己破産で清算されたら起業したい」とお考えの方もいるかもしれません。
注意点はいろいろありますが、先生がいうように起業そのものに法的制限はありません。
今回は破産後の起業に関して、以下のポイントを中心に解説します。
- 自己破産後に起業する際の注意点
- 自己破産後の起業で資金を調達する方法
- すでに起業している人の自己破産の注意点は?
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自己破産後に起業は可能!
起業自体は、法的に制限されていない
以前の旧商法では破産者が取締役として起業することは一定期間できなかったんだ。
でも、2006年に現行の会社法が施行されてからは撤廃されたんだね。だから、今は破産後すぐでも起業できるし、取締役に就任できるんだ。
取締役は退任になるが再任ができるようになった
でも、民法には委任の終了事由として、自己破産の手続きの開始決定を受けたことって規定がされているんだ。
(委任の終了事由)
第六百五十三条 委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者又は受任者の死亡
二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
三 受任者が後見開始の審判を受けたこと。
【引用:民法第653条ーe-Gov法令検索】
自己破産が認められれば資格制限も解除される
自己破産では手続き中、一定の資格が制限を受ける。だから資格を使って働くことができないんだ。
- 弁護士
- 司法書士
- 税理士
- 公認会計士 など
だからこうした職業で起業・独立することも可能だよ。
自己破産後に起業する際の注意点
ただし、注意点もあるから、よかったらセットで覚えてね。
- 必要最低限の財産から再スタートになる
- 資金調達が困難な可能性が高い
- 賃貸物件を借りられない可能性がある
- 個人事業主の賃貸審査は難易度が高い
- 自己破産から7年は再度自己破産ができない
必要最低限の財産から再スタートになる
だから、自己破産後に事業を始める場合は、必要最低限の財産から始めないといけないよ。
とはいえ、自己破産は財産のすべてを没収されてしまうわけじゃないんだ。
手元に残せる財産もあるから、自己破産でも残せる財産と失う財産を一部紹介するね。
手元に残せる財産 | 失う財産 |
|
|
資金調達が困難な可能性が高い
多くの場合、事業資金は銀行から借り入れるよね。でも、自己破産によるブラックリストで借り入れられない可能性が高いんだ。
- 信用情報(金融的な取引の記録)に債務整理・滞納などの記録が追加されて審査を通過できない「状態」をいう
- 「ブラックリスト」という名前のリストが存在するわけではない
各団体の登録期間を見てみましょう。
破産記録の登録期間
信用情報機関 | 登録期間 |
CIC(株式会社シー・アイ・シー) | 契約期間中および契約終了後5年以内 |
JICC(株式会社日本信用情報機構) | 契約継続中及び契約終了後5年以内 |
KSC(全国銀行個人信用情報センター) | 破産手続開始決定等を受けた日から7年を超えない期間 |
ところが、自己破産の記録が判明すると、審査に通過できない可能性が高くなるんだ。
何か事業を起こそうと思ったら少なくとも数百万は必要だし、業態や業種によっては1000万円を超えるかもしれないからね。
賃貸物件を借りられない可能性がある
理由は2つだね。
- 信用情報(ブラックリスト)に自己破産の記録が残ってるから
- 起業したばかりだと賃料を払えるだけの売り上げがないから
賃料を保証する会社も審査を行うんだけど、基本保証会社は信用情報を照会できない。
信用情報の加盟店は、クレジットカード会社・銀行・消費者金融などだからね。
ただし、信販系の家賃保証会社だと信用情報を参照できてしまうので、審査が通らない可能性があるってことだ。
どの事業でもそうだけど、事業内容・財務状況がわかる書類を提出して、賃料を払えるだけの売上があるかどうか審査されるんだね。
個人事業主の賃貸審査は難易度が高い
そもそも個人事業主とは「組織や会社に属さず、個人で独立して事業を行う人」なんだけど、賃貸審査の難易度が高くなる理由を簡単にまとめるとこんな感じだよ。
個人事業主の賃貸審査が通過しにくい理由
- 収入が不安定と判断されやすい
- 連帯保証人が必須
- 審査の際の必要書類が多い など
審査のハードルが高くなるのも納得できますね。
自己破産から7年は再度自己破産ができない
だから、自己破産後に始めた事業がもしも失敗して借金をしたとしても、7年間は自己破産できないから注意しようね。
これは、破産法第252条で決められているんだ。
(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
(中略)
十 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第二百三十五条第一項(同法第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
【引用:破産法第252条第1項第10号ーe-Gov法令検索】
自己破産後に起業・会社設立をするコツ
お次は、注意点をふまえて起業する際のコツを紹介するよ。
家族や親族を代表にして融資を受ける
代表にする家族や親族の信用情報に問題がなければ、問題なく融資を受けられる可能性があるからね。
共同経営者がいればその人を代表取締役にすることで、融資を見込めるかもしれない。
ただいずれのケースにしても、よく話し合ってから決めてね。
初期費用をかけずに事業を開始する
- 実店舗を持たないネットショップ
- PC1台で始められるクリエイター など
開業支援サービス(例)
- ネットショップ・フリーランス:ストアカ|開業前の基礎知識を得られる
- 実店舗:canaeru(カナエル)|物件探しから開業準備までトータルサポート
開業資金のサポートについては、このあと紹介するからね。
自己破産後の起業で資金を調達する方法
- 再チャレンジ支援融資|日本政策金融公庫
- 新創業融資制度|日本政策金融公庫
- 再挑戦支援制度|信用保証協会
- クラウドファンディング
再チャレンジ支援融資
本来の制度の趣旨は「一度事業に失敗した人の再創業の支援」なんだけど、過去に自己破産した人でも利用できるのが特徴なんだ。
この再チャレンジ支援融資は主に2つに分けられるよ。
- 国民生活事業(個人)
- 中小企業事業(中小企業)
再チャレンジ支援融資の条件
新たに開業する、または開業後おおむね7年以内で、次にあげる条件すべてを満たす人が対象になるよ。
- 廃業歴がある個人、または廃業歴がある経営者が営む法人である
- 廃業したときの負債が新たな事業に影響しない程度に整理される見込みがある
- 廃業の理由・事情がやむを得ないものである
- 新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方
【参考:再挑戦支援資金ー日本政策金融公庫】
再チャレンジ支援融資の融資限度額と返済期間
融資限度額 | 返済期間 | |
国民生活事業 | 7,200万円(運転資金4,800万円を含む) | 設備資金:20年以内 運転資金:15年以内 |
中小企業事業 | 7億2,000万円(運転資金2億5,000万円) |
【参考:再挑戦支援資金ー日本政策金融公庫】
新創業融資制度
こちらも、先ほどと同じ日本政策金融公庫が運営しているよ。再チャレンジとの違いは、新たに事業を始める人向けであること。
担保や保証人が原則不要というメリットもあるんだよ。
新創業融資制度の条件
対象者の要件
- 新たに事業を始める、または事業開始後税務申告を2期終えていない人
- 新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方
自己資金の要件
- 新たに事業を始める、または事業開始後税務申告を1期終えていない場合は、創業資金総額の10%以上の自己資金を保有している人
- 「現在働いている企業と同じ業種の事業を始める人」などに該当する場合は、本要件を満たすものとする
【参考:新事業融資制度ー日本政策金融公庫】
新創業融資制度の融資限度額と返済期間
融資限度額 | 3,000万円(運転資金1,500万円を含む) |
返済期間 | 設備資金:20年以内 運転資金:15年以内 |
利率 | 1.05~2.05% ※条件による |
【参考:新事業融資制度ー日本政策金融公庫】
信用保証協会の再挑戦支援制度
信用保証協会
中小の零細企業や個人事業主がお金を借りやすいように保証を請け負う公的機関
例として、横浜市が用意している「創業おうえん資金」を紹介するね。
「創業おうえん資金」は、これから横浜市内で事業を始める、または事業を始めて5年以内の人のために創設されている支援制度。
簡単な概要も紹介するから、気になったら調べてみてね。
創業おうえん資金の概要
条件 | 次のいずれかに該当する方 1.これから創業予定(現在事業を営んでいない方に限る)で、1ヶ月以内に市内で個人事業を開始する方、又は2ヶ月月以内に市内で会社を設立し事業を開始する方 2.既に創業されている方で、次のいずれかに該当する方(当該事業の開始時に他の事業を営んでいない方に限る) (1)個人事業の開始・会社の設立から5年未満の方 (2)個人事業を開始したのち、新たに会社を設立した方が、事業の譲渡により事業の全部又は一部を当該会社に承継させる場合に、個人事業を開始して5年未満の方 3.事業を継続している会社により新たに設立(分社化)された会社で、設立の日から5年未満の方(事業を継続しつつ、新たに市内で会社を設立(分社化)する方を含む) |
資金使途 | 設備資金および運転資金 |
融資額 | 3,500万円以内 |
金利 | 固定金利:19%以内 ※特定創業支援等事業の支援を受けた方など一部1.5%以内 |
返済期間 | 設備・運転資金ともに10年以内 |
担保 | 原則不要 |
※条件は2023年1月現在のもので、今後変わる可能性があります
【参考:創業おうえん資金ー横浜市】
ただし、各支援制度にはそれぞれ審査があって必ず利用できるわけではないから、あくまでも参考ね。
クラウドファンディング
メリットとデメリットを簡単に紹介すると、こんな感じ。
クラウドファンディング
メリット
- 不確実な事業でも資金を調達できる可能性がある
- 支援者に対するリターンを金銭以外に設定できる
- 出資を募る段階で募る側の料金は発生しない
デメリット
- アイデアを盗まれる可能性がある
- 資金が集まらない可能性がある
- プロジェクトが頓挫すると信用を失うおそれがある
2019年に全世界で行われたクラウドファンディングのうち、成功したのは約22%(クラウドファンディング(購入型)の 動向整理) 。
さいむくんのいう通り手軽に始められるけど、あまりおすすめはできないんだ。
起業している人が自己破産する際の注意点
法人の場合は代表者も自己破産することに
連帯保証人は、債務者本人と同じ責任を負うから。
だから、一括で請求された借金を代表者が払えなかったら、必然的に代表者も自己破産しないといけないんだ。
代表者の自己破産は避けられない可能性が高いですね。
管財事件になるので費用も多くかかる
同時廃止事件 | 財産が少ないなど財産調査が不要な場合に行う手続き |
管財事件 | 財産や債権者が多い、財産調査が必要な場合に行う手続き 法人や代表者の自己破産で行われる場合が多い |
少額管財事件 | 管財事件と同じ条件であるものの、弁護士が申し立てた場合に行われる手続き 個人の自己破産で行われる場合が多い |
財産が多いと破産管財人(はさんかんざいにん)という弁護士が選ばれて、財産の調査を行う。
この人の報酬もかかるから、手続きの費用も高額になるんだ。
自己破産で手続きにかかる費用
手続き | 費用 |
同時廃止 | 裁判所費用:1~5万円 弁護士費用:40~45万円 |
少額管財 | 裁判所費用:20万円(東京地裁の場合) 弁護士費用:45~50万円 |
管財事件 | 裁判所費用:50万円~ 弁護士費用:45~50万円 |
- 負債総額が5,000万円以上
- 債権者数が300人以上
管財事件で必要な裁判所費用
負債総額 | 法人 | 個人 |
5,000万円未満 | 70万円 | 50万円 |
5000万円~1億未満 | 100万円 | 80万円 |
1億~5億未満 | 200万円 | 150万円 |
5億~10億未満 | 300万円 | 250万円 |
10億~50億未満 | 400万円 | |
50億~100億未満 | 500万円 | |
100億~ | 700万円 |
会社の在庫や備品は勝手に処分しない
自己破産では、会社の在庫や備品は、破産管財人が売却して、売却代金を債権者に分配しないといけない。
もし破産管財人の許可なく勝手に処分してしまうと、最悪、自己破産が認められない可能性があるんだ。
財産隠しを疑われてしまうからね。自己破産のルールをまとめた破産法では、財産隠しを禁止しているんだよ。
(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
【引用:破産法第253条第1項第1号ーe-Gov法令検索】
早めに相談すれば、なにか解決策が残っているかもしれないよ。
- 在庫商品の保管に多額の費用がかかる
- 在庫商品の引き渡し日が迫っている など
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まとめ
- 自己破産後の起業は可能!
- 資金調達は困難になる可能性がある
- 初期費用を抑えられる業種で起業するのも選択肢の1つ
- 公的な資金援助では審査が必須
今回の解説でもあげたように注意点はいろいろあるけど、起業そのものは禁止されていないからね。
自己破産は弁護士に依頼して行うのがベストだけど、破産の相談の際に「起業したい」といってみてもいいんじゃないかな。
起業するというゴールに向かって何をどうしたらいいか、一緒に考えてくれるかもしれないよ。
また、法律事務所の多くは、自己破産などの相談を無料で受け付けているそうなんだ。ひとりで考えるのに疲れてなくても、検討してみてね。
企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。