知的財産・特許

意匠登録の審査基準とは?物品の定義や審査の流れをわかりやすく解説

意匠は日本語に直すと「デザイン」といったような意味になりますが、特許庁に申請することで、創作者の権利を守ることができます。具体的には、そのデザインを他社が真似して販売したり出来なくなり、事実上の独占状態になります。

ただし、どんなものでも意匠登録が認められるわけではなく、法律で決められた要件にあてはまっている必要があります。

この記事では、意匠が認められる基準や審査の流れをできるだけわかりやすく紹介したので、意匠について知りたい方は是非とも読んでみてください。

意匠として認められる基準(要件)

それでは、意匠審査で認められるための基準(要件)を解説していきます。

①物品等と認められるものであること

まず、意匠として認められるには「物品等と認められるもの」でなければいけません。いきなりわかりにくいですね。もう少しわかりやすくいうと、「現実世界にある物体」でなければいけない、といったところでしょうか。

条文には「物品の形態についての創作でなければいけない」とあります。例えば、物品から形態が切り離されてしまった、「単なる模様」などは意匠として認められません。

②物品自体の形態であること

例えばですが、ハンカチがあったとします。ハンカチを折り曲げて花の模様を作ったとしても、それはハンカチそのものの形態とは認められません。本来ハンカチは平べったいものですからね。

ただし、あらかじめハンカチが花の模様の状態に折りたたまれているような商品の場合、「ハンカチの置物」として意匠が認められる場合があります。

③視覚に訴えるものであること

「視覚に訴えるもの」これもまたあいまいな表現ですが、「肉眼で見て全体像を確認できる」といった意味になります。

視覚に訴えないものといえば「におい(嗅覚)」や「音楽(聴覚)」があてはまりますね。また、「小さすぎて見えないもの」なども該当してくる場合もあります。

④視覚を通じて美観を起こさせるものであること

条文には「美観を起こさせないものは意匠とは認められない」とあります。具体的にはどういうことなのでしょうか。

そもそも「美感」という言葉自体あいまいではありますが、ここでは「いいな」と感じるもの、というようなニュアンスで理解しておきましょう。

美術品のような素晴らしいものでなくても、なんとなく「これいいじゃん」と思わせるものであれば意匠は認められます。

逆に「機能や効果がメインで美感をほとんど感じないもの」や「まとまりがなく貧雑な感じで、美感がほとんどないもの」に関しては意匠は認められません。

⑤意匠が具体的なものであること

意匠登録を認められるには、以下の2点が具体的でなければいけません。

  1. その物品の使用目的や用途
  2. トータルとした「デザイン」の内容

具体的で無いものの例

意匠が具体的でないものの例とは、例えば、以下のものが当てはまります。

  1. その物品の使用目的や使い方がわからないもの
  2. 願書内の図が相互に一致せず、意匠の内容がわからないもの
  3. 願書に添付された図面や写真が不鮮明な場合

③は、単純に「画像の解像度が低すぎてわからない」「画像が小さすぎてわからない」などが該当します。

【引用:意匠審査基準改定の概要  – 特許庁

例えば上記画像の場合、水色の背景までが意匠なのか、内側のひまわりの部分までが意匠なのか、説明がなければ判断できませんね。こういうものは「具体性に欠ける」として意匠が認められません。

⑥工業上利用することができるもの

工業上利用することができるもの」というのは、「特許法」「実用新安法」でいうところの「産業上利用することができる発明」とは意味が異なります。具体的には「工場や施設などの工業的な方法を用いて量産することができるもの」が意匠として認められます。

工業上利用することができないものの例

工業上利用することができない物としては以下のようなものが当てはまります。

①自然物を加工せずに使用しているようなもの

→鉱物などの自然物をあまり加工しないまま使用する場合、工業的に量産するのが難しくなるため、量産するのが難しくなります。

②不動産

→「大量生産が可能かどうか」という点において当てはまらないため、工業上利用することができないものとなります。

③著作物全般

→絵や芸術品などの著作物は基本的に一品ものであり、大量生産することを目的として制作されたものではないため、「工業上利用することができる」にはあてはまりません。

基本的に認められないもの

逆に、意匠として認められないものにはどんなものがあるでしょうか。

不動産(原則)

不動産は「移動することができない」「土地に定着しているもの」として、物品として認められません。ただし、不動産として利用するものでも、量産することが可能で、移動することが可能なものであれば意匠として認められます。

例えば「組み立て型プレハブ「門」などは意匠として認められる可能性があります。

液体や気体、固体以外のもの

気体や液体など、固体ではないものは物品ではないため、意匠として認められません。また、光なども物品及び意匠とは認められません。

粉状の物、粉状の物の集まり

粉状のものなどは、その粒一つひとつが固体であり、一定の形態となっていても、全体としては個体ではない(崩れたりしてしまう)ため、物品とは認められません。

ですが、粉状のものが集まってしっかりと固形になっているものは物品として認められます。例えばですが、「砂糖」は認められませんが、それを固めた「角砂糖」は物品として認められます。

意匠審査の流れ

意匠が認められる基準がなんとなく把握できたところで、意匠審査の流れについて説明していきます。まずは以下のフローチャートをご覧ください。


【参考:牛田特許商標事務所

①必要書類の用意

まずは出願するにあたって、必要書類を用意します。

願書

願書を作成します。願書にはフォーマットがあり、それに沿って必要事項を記入していくような形になります。


【引用:意匠登録出願書類の書き方ガイド – 独立行政法人 工業所有権・研修館】

画像にある通りですが、主に以下のような事項を記入します。

  • 整理番号
  • 提出日
  • あて先
  • 意匠に関わる物品
  • 創作者の情報
  • 出願者の情報
  • 物品の説明

記入の際「出願人」と「創作者」が違ったり、意匠に関する説明文を書かなければいけなかったりと、いくつか注意しなければいけないポイントがあります。自分でできない場合には専門家に依頼しましょう。

図面

2つ目に必要な書類は、「意匠に関する図面」です。まずは特許庁のサイトにある、図面のサンプルを見てみましょう。

【引用:意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引き

  • 正面図
  • 背面図
  • 右側面図
  • 左側面図
  • 平面図
  • 底面図

上記の6枚の画像が必要になります。物品の形状がわかりにくい場合には「斜面図」、例えば変形する物品の場合には「変形前」「変形後」の違いがわかるように図面を追加しなければなりません。図面は、イラストのようなものではなく、写真でも問題はありません。

②出願

次に、用意した書類を実際に提出するときになりますが、以下の2種類の方法があります。

  • 書面での提出
  • ネットからの出願

書面での出願の場合、「特許庁の出願化の窓口に持参する方法」と「特許庁長官宛てに郵送」のどちらかの方法で出願できます。

ネットから出願を行う場合、下記のリンクから「出願ソフト」をダウンロードしましょう。

【関連リンク:インターネット出願ソフト – 電子出願ソフトサポートサイト

③登録

審査の結果、意匠登録可能と判断された場合、登録査定が行われます。その後、期日内に登録料を払うことにより正式に設定登録となります。登録されたあとも、毎年登録料がかかるということを覚えておきましょう。

④失敗したら:拒絶理由通知

ここからは、審査の結果、登録の許可がおりなかった場合の流れを説明します。「意匠登録できない」と判断された場合、「拒絶理由通知」が送られてきます。それには、「どうして意匠登録できないのか」の理由が記載されています。

その内容に従って意匠を修正・補正することで改めて登録を受けることができます。ただし、「拒絶された理由」について納得することが出来ない場合、審査官に交渉や抗議を行うことで登録を受けることも出来ます。

  • 内容に従って修正する場合→手続補正書を提出
  • 審査の結果に反論する場合→意見書を提出

⑤失敗したら:拒絶査定

拒絶理由通知に従って意匠を補正するなどしても、登録の許可が降りなかった場合、「拒絶査定」がなされます。

通常はそのまま「審査落ち」となりますが、それでも納得いかない場合には、次に説明する「拒絶査定不服審判」を行うことになります。

⑥失敗したら:拒絶査定不服審判

拒絶査定に対して納得できない場合には、不服申し立てをすることができます。これを「拒絶査定不服審判」と呼びます。

あくまで「意匠を認めるか認めないか」を争うものであり、「審査の違法性など」を争うものではありません。拒絶査定不服審判では3名の審判官によって審理が行われます。

意匠についてわからないことは弁護士に相談しよう

意匠を認められるには、いくつかのポイントがありましたね。

  • 物品と認められるものであること
  • 物品自体の形態であること
  • 視覚に訴えるものであること
  • 視覚を通じて美感を起こさせるものであること

これらがどういう意味なのかは何となくわかるものの、実際に出願をするとなるとわからないことだらけです。

「意匠登録をしたい」「審査に落ちてしまった」「意匠についてわからないことがある」などなどお悩みがある方は、下記のフォームからご相談をいただければと思います。

運営会社である「FAST法律事務所」が誠意を持って対応させていただきます!

ABOUT ME
浜北 和真
2017年から法律ライティングをはじめ、2019年から「スタートアップドライブ」「債務整理note」をはじめとした複数の法律メディアでコンテンツディレクターとしてコラム制作を監修。主に離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意分野。制作・監修コラムはゆうに3000を超える。
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この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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