判例

労働判例の読み方「更新拒絶」【高知県立大学後援会事件】高知地裁平30.3.6判決(労判1183.18)

0.事案の概要

 この事件は、有期労働契約が2回更新され、通算雇用期間が29か月であった従業員の、3回目の契約更新が拒絶されたことの適否が争われた事案です。労契法1912号の適用が否定され、更新拒絶が有効と判断されました。
 ここでは、1号2号の関係に絞って、検討しましょう。

1.労契法191号2号の違い

 条文を見てみましょう。
 1号(実質無期契約型)は、①過去に反復更新されたこと、②無期従業員の解雇と「社会通念上同視できる」こと、の2つが要件です。
 2号(期待保護型)は、③更新の期待に「合理的な理由がある」こと、が要件です。
 そして、①が無いのに③が認められる場合は限られるでしょうから、①は大きな違いではありません。
 ②と③は、文言上、とても違うように見えます。すなわち、②は、相対的な評価(無期従業員との比較)であり、③は、絶対的な評価(期待のレベル)、という文脈です。
 他方、いずれも漠然とした概念であって、単に事実を並べるだけでなく、その事実を評価しなければ判断できません(評価的事実、規範的事実)。

2.あてはめ

 ところが、両者を判断する前提として裁判所が指摘する事実は、非常に似ています。
 1号では、①就業規則に3年上限と明記、②契約更新の都度、有期であることを明確に伝え、漠然と更新しない、③3年を超えた従業員がいない、という事実です。
 2号では、ほぼ同様の①~③に加え、④3年満了を前提とした転職活動と履歴書の記載、⑤当該従業員の更新回数が2回でしかない、⑥その他(関連法人での雇用実態との比較が適切でない)、という事実です。
 このうち、⑤は1号の①要件(上記1)と重なるでしょう。⑥は、1号に関して議論されている関連論点と同じですから、関連論点の結論を先取りしているだけで、やはり重なるでしょう。
 そうすると、④、すなわち従業員自身が期待していなかった、という事実だけが、2号固有の問題、と評価できそうです。

3.実務上のポイント

 実務上、更新の期待を発生させたくない場合、労契法191号2号両方を意識しなければなりませんが、両者はかなり重なります。
 そこで、「実質無期契約」「更新の期待」を別々に考えるのではなく、「無期契約と同様の更新の期待」を認定されないようにする、という発想で、総合的に検討すると良いでしょう。1号2号のいずれか固有の問題か、共通する問題か、等を議論しても、結果的に両者とも一定のレベルに達していなければ、1号2号のいずれかに該当してしまうので、議論の意味がないのです。
 本件では、2号固有の問題が指摘されましたが、そのことで1号2号を別々に検討すべき必要性が示された、とも言えないと思われます。

※ 参考資料
(有期労働契約の更新等)
第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

※ JILAの研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。
 その中から、特に気になる判例について、コメントします。

この記事の執筆・監修専門家
芦原 一郎
芦原 一郎
Seven Rich法律事務所 ジェネラルカウンセル/弁護士/NY州弁護士/証券アナリスト 東弁労働法委員会副委員長/JILA(日本組織内弁護士協会)理事 JILA芦原ゼミ、JILA労働判例ゼミ、社労士向け「芦原労判ゼミ」主宰 お問い合わせは、ashihara@sr-l.comまで。
労働問題に関する相談はSeven Rich法律事務所まで

Seven Rich法律事務所では、24時間365日労働問題の法律相談を受け付けています。
お問い合わせはこちらまで。

お問い合わせはこちら