ローンもまだ終わってないみたいだし、自己破産による影響や手続きの流れも知りたいよね。
自己破産をご検討中の方で、このようにお悩みの方はいませんか?
自己破産をすると、原則として、自分名義の不動産を処分する必要があります。しかし、処分をするタイミングや方法については注意が必要です。
これは、不動産を処分するタイミング次第ではより高額で処分できたり、逆に自己破産に失敗するリスクが生じたりするためです。
そこで今回は、自己破産で不動産を処分すべきタイミングや、処分する際の注意点について、基礎から分かりやすく紹介しています。
また、不動産を手放すことなく借金を整理できる個人再生についても解説しています!
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自己破産をすると基本的に不動産は手放すことになる
一般的に言って不動産は高額な資産だから、ほとんどの場合、処分されることになってしまうね。
どちらの手続きになった場合でも、不動産を手放す必要があるんですか?
手続名 |
管財人の有無 |
特徴 |
管財事件 |
管財人が選任される |
管財人による調査が行われる |
同時廃止事件 |
管財人が選任されない |
手続が早く済み、費用も安い |
いずれの場合にも、不動産は処分しなければならない。
といっても、不動産を保有している場合には、基本的に管財事件になるんだ。
二つの手続きの違いは、管財人がつくかどうかだよね。
管財人とは、自己破産手続きのサポート役で、破産する人の財産の処分などを行う人のことだ。
自己破産の申立て時に不動産を保有している場合、その不動産の価値を適切に把握し、処分する必要があるから、基本的には管財事件となるんだ。
不動産を処分するタイミングと流れ
不動産の処分って、どのタイミングでやるのかな。
自己破産の前?後?
ただし、自己破産の手続きを開始する前と後とでは手続きの方法が異なるから、以下からは具体的な処分方法について確認していこう。
自己破産前|自分で売却を行う(任意売却)
ただし、後ほど紹介するように、事前に売却をすると「免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)」に該当して自己破産が認められなくなったりするリスクがある。
そのため、自己破産手続き開始前の売却であっても、必ず事前に弁護士に相談するようにしてね。
自己破産手続き開始後|管財人または自分が売却を行う
以下からは、売却のタイミングごとに分けて、具体的な売却の方法や流れについて確認していこう。
管財事件の場合|基本的に管財人が売却を行う
まず、不動産などの財産は破産財団に組み込まれる。財団というのは、財産の集まり、くらいの意味だ。
破産財団に組み込まれた財産は、もはや持ち主でも勝手に処分することはできない。
抵当権は確か、「ローンの支払が滞ったときは、ローン会社が家を引き上げて、売却してローンの返済に充てますよ」という権利のことですよね。
ローンを完済している場合には、管財人によって不動産が売却され、代金は債権者に分配されることになる。
ローンがまだ残っている場合には、管財人はローン会社に売却してもいいか確認し、OKが出れば管財人が売却する。
NGが出た場合には、ローン会社が不動産を競売にかけるよ。
同時廃止事件の場合|自分で売却を行う
でも先生、自己破産手続きを開始したときに不動産を保有していると、基本的に管財事件になるんでしたよね?
ただし、オーバーローン状態の不動産を保有している場合には、同時廃止事件となることがある。
オーバーローンとは、不動産を売却して得られるお金よりも、ローンの残高が大きい状況のことを言うよ。
例えば、不動産の売却額が2000万円であるとき、ローン残高が3000万円残っているような場合だね。
アンダーローン |
売却額 > ローン残高 |
管財事件 |
オーバーローン |
売却額 < ローン残高 |
同時廃止事件 |
売却額をローンの返済に充てても大きな借金が残るわけだから、むしろ管財事件になりそうだけど…。
- 不動産のローン残高は32000万円、売却したら23000万円になる
- 不動産を売却してもその不動産には抵当権がついているためすべて住宅ローン会社に支払われるだけで他の債権者には1円も支払われない状況となるすれば借金返済できるため、住宅ローン会社は債権者(貸主)からは除外される
- その他にこれといった財産がなければ同時廃止事件として処理される
この1000万円で他の借金をすべて返済できるのであれば、自己破産する必要はなくなるね。
ただし、この1000万の他不動産以外にこれいった財産がないうえに、他の借金額が上回り、返済するのが困難な場合、破産手続きを行う意味がないので同時廃止事件として処理されるってこと。
不動産の処分を自己破産前に行うべき理由
自己破産手続きの費用は高くなっちゃうけど、管財事件にして管財人にお任せするのが一番楽そうな気もするなぁ。
以下からはその理由について紹介していくね。
より高額で売却できることが多いから
ローン会社などによって競売がなされた場合、高く値がついても相場の7割程度の価格になってしまうことが多くて、相場通りに売れることはほとんどないと言ってもいいんだ。
もともとが高額な商品だから、この3割の違いは大きい!
売却に必要な自己負担費用を軽減できるから
不動産の売却には、例えば仲介手数料や登記費用、印税やハウスクリーニング費用など、けっこう費用がかかるんだよ。
自己破産の手続き費用を賄うことができるから
債権者との交渉次第だけど、売却価格のうち20万円くらいを引っ越し費用として残すことも可能だよ。
引っ越しって何かとお金がかかるから、けっこうキツいかも…。
それに、任意売却しておけば自己破産手続きが同時廃止事件になる可能性も高くなるし、そうなれば自己破産の費用自体を安く抑えることができるよね!
自己破産後に残せるお金が増えるから
任意売却で少しでも高く売って、そのお金を手元に残しておけば、この範囲内については自己破産後も自分で自由に使うことができるんだよ。
任意売却を行う場合の注意点
じゃあ僕もさっそく不動産屋さんに行ってみるよ!
実は任意整理を行うためにはいくつも注意しなければならないことがあって、一歩間違えば、自己破産が認められないどころか、警察に逮捕される可能性さえあるんだ。
以下からその注意点について紹介していくから、しっかり話を聞いてね。
債権者の同意などの要件を満たすかチェック
例えば、ローン会社の承諾を得る必要がある。
そもそも任意売却はローンの返済のために行うものではあるけれど、例えば売却しても全く価格がつかないような状況の場合には、債権者が同意してくれないこともある。
そのほかにも、以下のような点を満たすかどうか、前もって弁護士に確認してしっかりチェックしておこう。
- 物件が差し押さえられていないこと
- 共有名義人の同意があること
- 連帯保証人の同意があること
- 管理費・修繕積立費の滞納がないこと
- 売却期間が確保されていること
共有者全員の同意がないのに売却をしようとすると、他の共有者は売却の差止請求をすることができる。
もっとも、奥さんの同意を得て、共有名義のままさいむくんの持ち分だけを売却しようとしても、買い手がつかない可能性が高いね。
この場合には、まず奥さんの持ち分をさいむくんに譲渡して、共有状態でなくしてから任意売却の手続きに移るほうがおすすめだ。
(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
【引用:民法251条 – e-gov法令検索】
全ての債権者に対して平等に返済
債権者平等原則とは、特定の債権者にだけ優先的に弁済してはならず、すべての債権者に平等に返済をしなければならない、という原則のことだよ。
(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
(略)
三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
だけど、住宅ローンを完済してもまだお金が残るような場合(アンダーローン)、残ったお金を特定の債権者にだけ弁済する行為はダメなんだ。
もし偏頗弁済をしてしまったら、どうなるんですか?
この場合でも、裁判官の裁量次第で免責を認める裁量免責(さいりょうめんせき)という救済措置があるけれど、裁量免責を受けるためには管財事件にする必要があるんだ。
せっかく任意売却をして同時廃止事件になる予定だったのに、これだともったいないでしょ。
だから、自己破産手続き開始前に任意売却をする場合には、売却行為後の返済行為アが偏頗弁済にあたらないかどうか、あらかじめ弁護士に相談するようにしよう。
財産隠しとならないように注意
もし市場価格よりも不当に安いと判断されると、財産隠しをしたものとみなされ、偏頗弁済と同じように免責不許可事由に該当してしまう。
(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
それから、不動産鑑定の結果の価格が適正であることを証明するために、複数の鑑定をしてもらって査定を出しておいたほうがいいね。
詐欺破産罪にならないように注意
詐欺破産罪とは、債権者を不当に害する目的で財産を処分したり、借金を踏み倒そうとする行為に成立する犯罪だよ。
(詐欺破産罪)
第二百六十五条 破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者(相続財産の破産にあっては相続財産、信託財産の破産にあっては信託財産。次項において同じ。)について破産手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第四号に掲げる行為の相手方となった者も、破産手続開始の決定が確定したときは、同様とする。
一 債務者の財産(相続財産の破産にあっては相続財産に属する財産、信託財産の破産にあっては信託財産に属する財産。以下この条において同じ。)を隠匿し、又は損壊する行為
二 債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為
三 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
四 債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為
2 前項に規定するもののほか、債務者について破産手続開始の決定がされ、又は保全管理命令が発せられたことを認識しながら、債権者を害する目的で、破産管財人の承諾その他の正当な理由がなく、その債務者の財産を取得し、又は第三者に取得させた者も、同項と同様とする。
【引用:破産法265条 – e-gov法令検索】
そんな罰金払えるわけないし、しかも罰金刑は仮に自己破産しても免除されない!
そんな恐ろしい事態にならないように、やっぱりまずは弁護士に相談しよう…。
自己破産前に家族などに名義変更をするのはNG
じゃあ、自己破産手続きをする前に、不動産の名義人を家族などに変えておけばいいんじゃないの?
財産隠し行為として免責不許可事由に該当するし、詐欺破産罪が成立する可能性もある。
それに、仮に名義を変えたあとでも、管財人によって名義変更を取り消されて、結局は没収の対象になってしまうんだ。
名義変更だけではなく、贈与や不当な価格での売却でも同じだよ。
もし名義変更などの後に経済的事情が変化して自己破産する場合には、名義変更などの行為と自己破産とが全く関係ないことをしっかり証明する必要があるね。
マイホームに住み続けながら借金を整理する方法
愛着のあるマイホームだから、このまま住み続けたいけど、しょうがないか…。
では早速その方法について具体的に紹介していくね!
個人再生ならローン返済中でも自宅を残せる
この個人再生には、住宅ローン特則というものがあるんだ。
これを利用すれば、元本ごと借金を減額しつつ、マイホームに住み続けることができるよ。
住宅ローン特則の利用条件やメリット、利用できないケースについては、以前にも解説してくれましたね!
家族などに買取ってもらう
ちなみに、自分で買うことも可能だよ。
これらの場合、不動産業者に査定価格を出してもらい、基本的には一括払いでの支払いを求められる。
リースバックで賃貸住宅として住みつづける
これを利用すれば、今までと同じようにマイホームに住み続けることができるよ!
ただし、基本的には「いつか買い戻します」という契約になることが多いため、管財人の許可が下りない可能性がある。
既にローンを完済していた場合には、急に発生する賃料を支払うのが大変な場合もあるかも。
どのような方法でマイホームに住み続けるのがベストなのか、法律的にも、お金の面からも、事前にしっかり弁護士と相談しておいたほうがよさそうだね!
まとめ
- 自己破産をすると、基本的に不動産を手放す必要がある
- 不動産の処分は自己破産前の任意売却がおすすめ。ただし、偏頗弁済や財産隠しに気を付けよう
- 個人再生やリースバックを利用すれば、マイホームを残しつつ借金を整理できる
自己破産は、生活に必要不可欠な財産を除いて、全ての財産をお金に変えて債権者に分配することが前提の制度だ。
そのため、残念ながら自己破産をして不動産を手元に残すことは極めて難しく、すこしでもマシな方法を見つけるしかない、というのが実情だ。
今日紹介した、自己破産前の任意売却をすると、比較的高額で売却ができるなどのメリットがある一方、一歩間違えば自己破産の失敗にも繋がりかねない。
不動産の売却に関しては様々なトラブルに発展する可能性があるから、無理に一人で不動産業者との交渉に臨むのではなく、まずは弁護士に相談してみよう!
企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。