いっそ自己破産してやり直そうかなあ。
だけど、事業はできれば続けたいし、どうしたらいいものか…。
たしかに、自己破産をすれば借金は全部チャラにできるけど、事業への影響ってどうなんだろうね。
そうだ、借金問題に詳しい先生のところに聞きにいこうか!
自己破産とは、法律の力を使って借金を減額する「債務整理」のうちの1つ。
自己破産をすれば、ほぼすべての借金の返済義務を帳消しにできます。
ただし、その代わりに高価な財産を没収されたり、ローンが組めなくなるなどのリスクもつきもの。
自己破産後も事業を継続していくのはなかなか難しいのが現実です。
借金問題を解決しながら、事業を継続していきたい場合にはどうすればいいか、この記事を読めば丸わかりです!
この記事では以下の3点を中心に詳しく解説していきます!
- 自己破産後に事業を継続するのが難しい理由
- 個人事業主が自己破産する際の注意点(買掛金・売掛金の扱い)
- 自己破産以外の借金解決方法とは
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自己破産後も事業を継続するのは難しい
その理由としては、以下の4つがあげられるかな。
- 事業で必要になる設備や在庫が没収されてしまう
- 事業に必要な契約が解除されてしまう
- 追加の融資が受けられなくなる
- 事業そのものが処分される可能性もある
事業で必要になる設備や在庫が没収されてしまう
自己破産の手続きの一種。破産者の財産について詳細な調査が必要な場合に管財事件となる。
簡潔にいえば、返済義務がなくなる代わりに、価値のある財産が没収されて、債権者に分配されてしまうのが管財事件なのさ。
その際に、事業のために使っていた設備や在庫などはほぼすべて没収対象になる。
たとえば個人事業主のカメラマンなんかは、高級な機材も借金の肩代わりとして奪われてしまうってわけ。
これが、自己破産をした個人事業主が事業を継続するのが難しい一番の理由だね。
事業に必要な契約が解除されてしまう
事業のために契約していた数々の契約も、解約することになるのさ。
自己破産で解約する契約
- 事務所の賃貸契約(住居兼用の場合は除く)
- 従業員との雇用契約
- 事業用の設備や機材などのリース契約
たしかに、これだけ契約を解約されてしまったら、事業を続けるのは難しそうだ…。
追加の融資が受けられなくなる
だけど、一度自己破産をしてしまうと、その後しばらくは追加の融資も受けられなくなってしまうんだ。
これには、「ブラックリスト」と呼ばれるものが関係しているね。
個人のお金の貸し借りに関する情報が記録されている信用情報機関に、自己破産などの事故情報が載っている状態。
そのときに自己破産をした過去がバレてしまって、「返済能力がない」と判断されて融資を断られてしまうんだ。
銀行などからお金が借りられなかったら、事業の継続は難しいですね。
事業そのものが処分される可能性もある
自己破産後も事業を継続しやすい業種
でも、場合によっては続けられるときもあるのかな?
逆にいえば、自己破産で失うものをそもそも使っていない事業であれば、自己破産をしても続けられる可能性があるのさ。
自己破産後も続けられる可能性がある事業
- 自宅で仕事をおこなっている(事務所を契約していない)
- 従業員の雇用や外注をおこなっていない
- 高価な機械や設備を必要としていない
- 在庫商品を抱える必要がない
- デザイナー、エンジニア、ライター
- モデル、ホステス
- 運んだ荷物の量に応じて収入が決まるドライバー
- 作業した日数に応じて収入が決まる建築作業員
自己破産後も事業を継続するための対策
具体的には以下のような対策が考えられるかな!
- 事業に必要なものを差押禁止財産として認めてもらう
- 自由財産の拡張を認めてもらう
- 自己破産以外の債務整理を検討する
事業に必要なものを差押禁止財産として認めてもらう
差押禁止財産とは、その名の通り差し押さえが禁止されている財産。
自己破産をしても差し押さえをしてはいけないものが民事執行法で細かく決められているんだ。
(差押禁止動産)
第百三十一条 次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。〜中略〜
四 主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
五 主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
六 技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
【引用:民事執行法第131条 – e-Gov法令検索】
だったら、個人事業主が自己破産をしても、設備とか在庫はそのまま残せそうですけど…。
どこまでが差押禁止財産と認めてもらえるかは、あくまで裁判所の判断による。
事業に使っていたものを差押禁止財産と理解してもらうためには高度な法律知識が必要になってくるから、弁護士に相談をするのがベストだよ。
自由財産の拡張を認めてもらう
自己破産をしたあとも手元に残せる財産のこと。以下のものが含まれる。
- 差押禁止財産(民事執行法により規定)
- 新得財産(破産手続き開始後に得た財産)
- 99万円以下の現金
- 20万円以下の預貯金・有価証券など
ただし、例外として「自由財産の拡張」が認められる場合もあるんだ。
自由財産の拡張が認められた財産については、破産後も没収されずに手元に残せるのさ。
自由財産の拡張が認められるかどうかは、以下のような判断基準によるね。
- 債務者の経済的な立て直しのために必要なものであるかどうか
- 自由財産の拡張を認めてもいい範囲の値段のものかどうか
自己破産以外の債務整理を検討する
ただし、借金トラブルを解決する手段は、自己破産だけではないんだ。
自己破産というのは、法律の力を使って借金を減額する「債務整理」という手続きのうちの1つ。
債務整理の中には、自己破産以外にも「任意整理」「個人再生」というものが含まれるんだよ。
任意整理 | 債権者と直接交渉して将来かかる利息をカットする |
個人再生 | 裁判所に申し立てをして借金を最大で10分の1まで減額する |
借金の状況によっては、自己破産よりもこれらの手段の方が適している可能性があるのさ。
ただし、任意整理や個人再生の場合でも、ブラックリストになることは避けられない。
結局新たな借入などはできなくなってしまうから、それでも事業が続けられるのかどうかは弁護士ともよく相談するべきだよ。
自己破産における売掛金・買掛金の扱い
自営業者が自己破産をした場合には、売掛金・買掛金の扱いにも注意が必要なのさ。
売掛金|発生したタイミングにより異なる
特に気をつけるべきなのは、破産手続きの開始決定をまたぐ場合には没収の対象になるということだね。
仕事のタイミング | 回収のタイミング | 売掛金の扱い |
破産手続き開始決定前 | 破産手続き開始決定前 | ・現金または預貯金という扱いになるため一定額までは手元に残せる |
破産手続き開始決定前 | 破産手続き開始決定後 | 没収の対象になる |
破産手続き開始決定後 | 破産手続き開始決定後 | ・新得財産の扱いになるため手元に残せる |
4月15日に破産手続き開始が決定したケース
- 3月20日に売掛金が発生、4月10日に回収…手元に残せる
- 4月5日に売掛金が発生、4月20日に回収…開始手続きをまたぐため没収
- 4月25日に売掛金が発生、4月30日に回収…手元に残せる
失ったら生活が困難になる場合などでは、「自由財産の拡張」が認められて手元に残せる可能性もあるよ。
買掛金|破産した時点で支払義務がなくなる
言ってしまえば取引先への借金だから、自己破産によって支払義務がなくなってしまうんだ。
自己破産の手続きを開始した時点で担当の弁護士が取引先にも受任通知を送るから、経営破綻が知られてしまうことになるね。
自己破産をしたことは知られたくないから、取引先の買掛金だけ先に払っておくっていうのはアリですか?
自己破産においては、すべての債権者を平等に扱わなくてはいけないと破産法で決められているんだ。
取引先だけを優先して返済するような行為は「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と呼ばれて、自己破産におけるタブー行為なんだよ。
もし偏頗弁済をしてしまったら、自己破産自体が認められなくなる恐れもあるから気をつけてね!
(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。〜中略〜
三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
【引用:破産法第252条 – e-Gov法令検索】
個人事業主の自己破産は複雑な「管財事件」となるのが一般的
個人事業主が自己破産をするときは、費用や手間などの負担が大きくなる「管財事件」として扱われるのがほとんどなんだ。
管財事件 |
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同時廃止事件 |
|
その調査のために、破産管財人を雇う必要があるんだ。
結果として、同時廃止事件に比べて費用や時間も大きくかかってしまうのさ。
同時廃止事件 | 管財事件 | |
弁護士費用 | 40~45万円 | 45~50万円 |
裁判所に納める費用 | 1~3万円 | 50万円~ ※破産管財人への報酬含む |
総額 | 40~50万円 | 95万円~ |
管財事件になりやすい理由
個人事業主だからといって、借金で焦げつきまくってほとんど財産がないような人もいると思うんですけど…。
どうしてそういう人でも管財事件になってしまうんですか?
個人事業主は、通常のサラリーマンのように、会社から給料をもらって生活をしているわけではないよね?
いろんな取引先とのお金のやりとりもあるし、どこかにお金を隠していないか詳細に調査する必要がある。
それに加えて、事業に使っている設備や機械も、財産価値を判断するのが難しい。
そういった理由から、個人事業主が自己破産をするときには、破産手続きの専門家である弁護士が破産管財人として詳細に財産を調べる必要があるのさ。
一社としか取引がない場合には同時廃止となる可能性もある
個人事業主という形態で仕事をしていたとしても、一社のみとしか取引がない場合(一社専従)だと同時廃止として自己破産が進められる可能性もあるよ。
実際にどうなるかは、弁護士に相談してみないとわからないのが正直なところかな。
自己破産をしたあとに再度の開業は可能!
でも、自己破産をして借金をチャラにできたら、そのあとまた新しく事業を始めるのは問題ないですよね?
自己破産をしたこと自体は開業には影響しない
ただし、自己破産が終わって無事に借金の返済義務が帳消しとなれば、そのような資格制限などの法律上の縛りも一切なくなる。
自由に起業ができるようになるってわけさ。
ブラックリストに登録された状態では、貸金業者などからの借入はもちろんのこと、事業者向けの融資を受けることはほぼ不可能だよ。
元手が少なくても始められる事業をするなどの対策を取る必要があるね。
再挑戦支援資金を使えば事業のための資金調達もできる
再挑戦支援資金とは、その名の通り一度事業を畳んでしまった人のために貸付を行っている国の施策だ。
審査に通れば自己破産後でブラックリストに載っている人でも大口の資金を借りられるのさ。
利用条件 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方のうち、次のすべてに該当する方
- 廃業歴等を有する個人または廃業歴等を有する経営者が営む法人であること
- 廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込み等であること
- 廃業の理由・事情がやむを得ないもの等であること
資金の使い道 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金 融資限度額 7,200万円以内(うち運転資金4,800万円) 返済期間
- 設備資金…20年以内
- 運転資金…15年以内
【引用:再挑戦支援資金 – 日本政策金融公庫】
破産から5~7年が経過すれば銀行などからの借入もできる
新たに開業したい場合には、ブラックリストが解消されるまでは資金を貯めるなどをしておくのが無難といえるかな。
個人事業主が自己破産をする際の注意点
ここで、個人事業主が自己破産をする際の注意点をあげておこう。
家族経営の場合は実態を厳しく調査される
家族経営の人は、以下のような違法行為が疑われやすいんだ。
- 労働実態のない家族を従業員としている
- 不当に高額な給与を払っている
破産管財人や裁判所は、家族経営の実態を重点的に調査するから、隠していた違法行為がバレてしまう恐れもあるね。
そうなると、自己破産が認められないだけではなく罪に問われる可能性もあるのさ。
家や車などの財産を失ってしまう
持ち家や車などの高価な財産は、ほぼ確実に失うことになってしまうね。
連帯保証人・保証人が借金を負ってしまう
自己破産をすると、連帯保証人・保証人が借金の残額を一括請求されてしまうんだ。
だけど、一括請求はあまりにひどくないですか?
なぜなら、借金の契約書には「自己破産などをすると期限の利益を喪失する」とほぼ確実に書かれているからだね。
指定された期限まで、支払いを待ってもらえるという債務者にとっての権利のこと。分割払いは期限の利益があることによって成り立っている。
つまりこの場合は、債務者の自己破産によって借金の肩代わりをすることになった保証人が一括請求を受けてしまうのさ。
借金に悩まされている事業主の方は弁護士に相談しよう
自己破産以外の債務整理が適している場合もある
手続き名 | 特徴 |
任意整理 |
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個人再生 |
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自己破産 |
|
どの手続きを選ぶべきか判断をするには、借金トラブルの専門家である弁護士に相談するのがベスト。
債務整理に強い弁護士であれば、これまでに何百人という人の借金問題を解決してきてる。
きっと一人一人にあった解決法を提案してくれるはずだよ。
借金問題に関する相談は無料でできる
相談ですら1時間いくらとか聞いたことあるし…ちょっと億劫だな…。
実は、借金問題に関する相談は無料で受け付けている弁護士事務所が多いんだよ。
借金に悩まされている人は相談料を工面するのも大変だということくらい、弁護士ならみんなお見通し。
まずは相談してみて、実際に債務整理を依頼するか決めればいいんだよ。
借金は放っておいても利息が膨らんでいくばかりで絶対に解決しない。
さいむくんも、うだうだ悩んでないでまずは相談してみなよ!
まとめ
- 自己破産後も事業を継続するのは困難
- 個人事業主が自己破産をするときには、複雑な管財事件になる可能性が高いのではじめから弁護士に依頼するべき
- 自己破産後に開業するのは可能だが、融資を受けるのには制限がある
- 自己破産以外にも借金トラブルの解決法はあるから、まずは弁護士に相談するべき
まずは弁護士に相談してみて、借金を解決してから次のステップに進むとするか…。
企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。