個人再生

給与所得者等再生とは小規模個人再生とどう違う?可処分所得とは?

せんせい
せんせい
「個人再生」と呼ばれている制度には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があるよ。

どちらでもいいというわけではなくて、それぞれに条件があるんだ。

僕はどっちが向いているんですか?
さいむくん
さいむくん
せんせい
せんせい
そうだね、さいむくんは給与所得者等再生のほうが向いているよ。

なぜそう言えるのか、それぞれの違いや条件などを照らしながらみていこう。

法律で認められている借金を減額する方法のひとつが「個人再生」です。

個人再生にはさらに2つの種類があり、どちらを選択するかによって成功できる可能性や減額の幅が変わります。

給与所得者等再生を選択したほうがよい人の条件や、返済シミュレーションを紹介していきましょう。

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個人再生は2種類・その違いとは?

せんせい
せんせい
まずは「個人再生」がどんな制度なのかをカンタンに説明するよ。

【個人再生とは】
  • 借金の返済が厳しくなった人が利用できる救済処置のひとつ
  • 裁判所に再生計画案を提出して許可を受けることで借金が大幅に減額される
  • 原則3〜5年の支払いで、約束どおり支払えば「完済」扱いにる

「民事再生法」には個人再生について「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2つがある。

それぞれの特徴をみていこう。

せんせい
せんせい

小規模個人再生

せんせい
せんせい
個人再生では小規模個人再生を選択するのが基本だよ。

実際に個人再生をしている人のほとんどが小規模個人再生を選択しているんだ。

なんで小規模個人再生を選ぶ人が多いんですか?
さいむくん
さいむくん
せんせい
せんせい
それは小規模個人再生のほうが借金をたくさん減額できる可能性が高いからだよ。

個人再生を考える一番の理由は「借金返済をラクにしたい」ってことだよね?

減額幅が大きい小規模個人再生を選ぶのは当然だよ。

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【小規模個人再生を選択するメリット・デメリット】

メリット デメリット
借金が債務額に応じて最大で10分の1まで減額される可能性がある(最小100万円) 認可されるには貸主の2分の1超以上または債権額の過半数以上の「消極的同意」が必要
小規模個人再生は減額できる幅が大きい。

ただし、貸主の頭数の半数以上または借金総額の半額分超以上の貸主が「個人再生なんて認めない!」と反対すると許可が下りないんだ。

せんせい
せんせい
さいむくん
さいむくん
つまり「たくさん減額される可能性があるけど貸主が許可しないおそれがある」ってことですね。

給与所得者等再生

せんせい
せんせい
給与所得者等再生は、小規模個人再生のなかの特則として位置づけられている制度だよ。
「給与所得者=サラリーマン」だから、サラリーマンが利用できる制度ってことですね!
さいむくん
さいむくん
せんせい
せんせい
名称を考えるとたしかにそうだし、裁判所もそういった区別をしている。

でも、実はサラリーマンでも小規模個人再生を利用できるんだ。

え?そうなんですか?
さいむくん
さいむくん
せんせい
せんせい
まずは小規模個人再生を検討し、それがムリなら給与所得者等再生を考えるのがセオリーだね。

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【給与所得者等再生を選択するメリット・デメリット】

メリット デメリット
貸主の消極的同意が不要 借金は「可処分所得の2年分以上」までしか減額されない
「可処分所得」ってなんですか?
さいむくん
さいむくん
せんせい
せんせい
可処分所得とは、給与やボーナスから税金・社会保険料などを差し引いた残りの手取り収入だよ。

つまり「自分の意思で使うことができる金額」という意味だね。

すると、僕の場合はだいたい200万円くらいだから400万円までしか減額されないってことか…
さいむくん
さいむくん

給与所得者等再生が使える人の条件

せんせい
せんせい
小規模個人再生が使えなかった場合は給与所得者等再生を考えることになる。

ただし、給与所得者等再生にも利用の条件があるから注意が必要だよ。

先生が「キミは給与所得者等再生が向いている」って言ったのは、どうせ貸主から反対されるから小規模個人再生が使えないって意味だったんですね…
さいむくん
さいむくん
せんせい
せんせい
そのとおり!

給与所得者等再生の利用条件をまとめておこう。

給与所得者等再生
  • 借金の総額が5,000万円を超えていないこと(住宅ローンを除く)
  • 安定した収入があり、その変動幅が小さいこと
  • 過去7年以内に給与所得者再生やハードシップ免責を利用していないこと
  • 破産の予想配当額以上の返済計画であること

小規模個人再生の条件と違うのは「過去7年以内に給与所得者等再生やハードシップ免責を利用していないこと」という点だね。
せんせい
せんせい
さいむくん
さいむくん
ハードシップ免責ってなんですか?
個人再生では、やむを得ない事情で計画どおりに返済できなくなった場合でも、総額の4分の3以上の返済が終わっていれば特別に残債をなしにできるんだ。

これがハードシップ免責だよ。

せんせい
せんせい

計画遂行が極めて困難となった場合の免責

第二百三十五条 再生債務者がその責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となり、かつ、次の各号のいずれにも該当する場合には、裁判所は、再生債務者の申立てにより、免責の決定をすることができる。

【引用】民事再生法|e-Gov

せんせい
せんせい
さらに給与所得者等再生では、破産した場合の予想配当額を超える返済を約束しないと許可されない。

これを「清算価値保障原則」と呼ぶよ。

給与所得者等再生を選択すべきケース

せんせい
せんせい
個人再生の2つの種類を比べたとき、有利なのは小規模個人再生だよ。

ただし、次のケースでは小規模個人再生が許可されないので給与所得者等再生を目指すことになるね。

貸主の半分以上が反対している

せんせい
せんせい
個人再生の手続きが始まると、裁判所が貸主に対して「この再生計画案を認めますか?」と問い合わせる。

もし貸主のうち半数以上が「反対だ!」と回答すると、小規模個人再生は許可されないんだ。

こわいなぁ…きっと反対されちゃうよ。
さいむくん
さいむくん
せんせい
せんせい
貸主の多くは「破産されるよりもマシ」と考えて個人再生を許可するけど、なかには強硬に反対されてしまうケースもある。

極端にいえば、貸主が2社だけだと1社でも反対すれば小規模個人再生は利用できないから、給与所得者等再生を選択することになるよ。

反対した貸主の総貸出額が半額を上回っている

せんせい
せんせい
同じように、借金の総額の半額を上回る貸主が「反対だ!」と回答したときも小規模個人再生は許可されないよ。
貸主 借金の残額 貸主の回答 再生計画の可否
A社 400万円 許可:900万円

反対:1,000万円

→小規模個人再生は許可されない

B社 500万円
C社 1,000万円
借金の総額が大きな1社が反対すれば許可されないってことですね。
さいむくん
さいむくん
せんせい
せんせい
そういうことになるね。

こういったケースも、貸主の許可がいらない給与所得者等再生を選択することになるんだ。

給与所得者等再生で借金はどれだけ減る?

せんせい
せんせい
さいごに、給与所得者等再生を利用してどのくらい借金が減るのかをシミュレーションしてみよう。

シミレーション
  • さいむくんの借金総額:19,00万円

(A社400万円・B社500万円・C社1,000万円)

  • さいむくんの可処分所得額:200万円(×2年分=400万円)
  • さいむくんの最低弁済額:300万円
  • さいむくんが自己破産した場合に清算される財産:マイカーの売却額100万円

給与所得者等再生を利用するには、①可処分所得額の2年分、②最低弁済額、③清算価値保障のもっとも高い金額を基準に再生計画案を立てることになる。

すると、最低でも400万円以上の再生計画案を提出しないと許可されないんだ。

せんせい
せんせい
さいむくん
さいむくん
小規模個人再生の場合はどうなんですか?
小規模個人再生は可処分所得額が考慮されないから、最低弁済額の300万円まで減額される可能性があるよ。

つまり、給与所得者等再生の場合と比べると100万円も負担が軽くなるわけだね。

せんせい
せんせい
個人再生の種類 返済すべき最低額 月々の弁済額

※5年で完済する場合

給与所得者等再生 400万円 約66,000円
小規模個人再生 300万円 50,000円
せんせい
せんせい
月々の返済額をみると、小規模個人再生のほうが約16,000円も軽い負担で済むことになるね。

この差はかなり大きいはずだよ。

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まとめ

せんせい
せんせい
個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があるけど、まずは小規模個人再生を考えて、それがムリなら給与所得者等再生を考えることになるよ。

今回のポイントをまとめておこう。

今日のまとめ
  • 借金の減額率が高いが小規模個人再生、利用しやすいのが給与所得者等再生
  • 給与所得者等再生は貸主の同意がいらない
  • 給与所得者等再生では可処分所得額の2年分以上しか減額されない

個人再生を考えるなら、まずは弁護士に相談してどちらの方法を使えるのかを判断してもらうことをおすすめするよ。

小規模個人再生を利用できるようなら、そちらのほうが有利だからね。

せんせい
せんせい
さいむくん
さいむくん
弁護士に相談しても給与所得者等再生しか利用できないって言われたらどうすればいいですか?

そんなことなら弁護士にお願いする必要はないとか?

そんなことはないよ!

給与所得者等再生のほうが認可されやすいといっても、個人再生の手続きは難しい。

裁判所にあずける予納金も抑えられるから弁護士のサポートは必須だね。

せんせい
せんせい
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著者情報

この記事の監修者
赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

監修者の詳細なプロフィール
この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。

20代後半に作ってしまった借金100万円を自力で完済した。

筆者の詳細なプロフィール