自己破産

自己破産が失敗に終わるケースは?NG行為やなくならない借金を紹介

さいむくん
さいむくん
先生、僕、自己破産をしようと思ってるんですが…自己破産って失敗することはあるんですか?

ギャンブルの借金とかもあるので心配です…。

結論からいうと、失敗する確率は約1%程度だよ。

ギャンブルでも自己破産が認められるケースも多いし、そこまで心配しなくていいよ。

ただ、嘘の報告をしたりすると、失敗する可能性があるから注意点もある。

せんせい
せんせい

この記事を読んでいるあなたは、自己破産をしたいけれど失敗をする不安があるのではないでしょうか?

この記事では自己破産について主に以下のテーマで話していきます!

  1. 自己破産が失敗するケースや自己破産ができないケース
  2. 自己破産を失敗させないためのポイント
  3. 自己破産に失敗した場合どうなるのか、対処法は?

ぜひ最後まで読んでいってください!

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この記事の内容
  1. 自己破産が失敗する確率は?
  2. 自己破産が失敗・認められないケース7つ
  3. 自己破産ができないケース4つ
  4. ギャンブルや浪費は本当に自己破産に失敗する?
  5. 自己破産を失敗しないためのポイント
  6. 自己破産に失敗したらどうなる?
  7. 自己破産が失敗・できないときの対処法
  8. 自己破産の失敗の確率を下げたいなら弁護士に相談する
  9. まとめ

自己破産が失敗する確率は?

さいむくん
さいむくん
先生、自己破産が失敗する確率が約1%って本当ですか?
そうだよ。ちゃんとしたデータをもとに、ここでは自己破産が失敗する確率や事例を紹介していくよ。
せんせい
せんせい

自己破産が失敗する確率は約1%

せんせい
せんせい
さっきも話したけど、自己破産が失敗する確率は約1%と極めて低く、ほぼ成功しているんだ。証拠を見せるよ。

同時廃止
取り下げ【引用:2020 年破産事件及び個人再生事件記録調査 – 日本弁護士連合会 消費者問題対策委員会

ちょっとわかりにくいけど、これは弁護士が加盟する団体、日本弁護士連合会の2020年の資料だね。

同時廃止などは手続きの名前なんだけど、実際に自己破産が認められなかったのは、申立却下や申立棄却、死亡終了、記入漏れなどだね。

取り下げは自分で取り下げたケースだから除外すると、2020年自己破産が認められなかった確率は1.04%だね。

せんせい
せんせい
さいむくん
さいむくん
意外ですね!とりあえず失敗する確率が極めて低いことがわかって、安心しました!

自己破産が失敗した例

さいむくん
さいむくん
とはいえ、僕がこの約1%にならないとも言い切れません…実際にどんなケースだと自己破産って失敗するんですか?
そうだね。じゃあ裁判例から、自己破産が失敗したケースを厳選して紹介するよ。
せんせい
せんせい

交通事故の損害を払わずに免責不許可となった事例

せんせい
せんせい
この人は、多数借り入れがあり、また、交通事故によって被害者から賠償金を請求されていたんだね。

うち銀行からの借り入れは80万円あったのに、年間2回利息を返済したい程度。その後複数回の飲酒運転で罰金や交通事故を起こしてる。

賠償金は一部しか支払ってないのに、自己破産を申し立てたんだ。

自己破産では、他人にケガなどを負わせた賠償金は免除されない。生じた車の修理費も、飲酒運転の結果だから「浪費」と判断された。

結果、この人は自己破産が認められなかったんだね。

裁判年月日 平成30年 3月30日 裁判所名 広島地裁福山支部 裁判区分 決定
事件番号 平29(フ)107号
事件名 免責申立事件
上訴等 抗告 文献番号 2018WLJPCA03306006

財産を隠したり破産管財人に協力せず免責不許可となった事例

せんせい
せんせい
これは、自己破産で申告しないといけない財産を隠したり、破産管財人(はさんかんざいにん。財産を管理する弁護士のこと)の業務を妨害したことで、自己破産が認められなかったケースだよ。

自己破産は、借金の返済義務がなくなる代わりに、一定以上の財産を持っている場合、没収されて債権者に分配する手続きなんだ。

裁判所の指示に従い、自分が持ってる財産をちゃんと申告しないといけないんですよね?
ともだち
ともだち
せんせい
せんせい
そうだね。会社の代表だったこの人は、負債総額も約10億円と大規模な自己破産だった。

でも財産約400万円の他、所有しているアパートや駐車場の収入なども申告しなかったんだね。

他にも、破産管財人に退去するよういわれた自宅に居座って業務を妨害したんだ。

自己破産は長くてもおおよそ1年くらいなんだけど、財産の調査にも時間がかかって、4年もかかっちゃったみたいだよ。

財産を隠したり、破産管財人の業務を妨害して「悪質」と判断されて自己破産が認められなかったんだね。

裁判年月日 平成24年 8月 8日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 決定
事件番号 平20(フ)17013号
事件名 免責不許可決定事件
裁判結果 不許可 文献番号 2012WLJPCA08086004
こんな風に、自己破産が認められなかったら、最後どうなってしまうんですか?
さいむくん
さいむくん
せんせい
せんせい
個人再生で減額した上で少しづつ返済するか…債権者(貸主)に訴えられて財産を強制的に回収されることになるだろうね…。

度重なるギャンブルや浪費で免責不許可となった事例

せんせい
せんせい
この事例もなかなかハード。この人は、無職なのに職に就いているように偽装して消費者金融からお金を借りたり、他人名義で借金をしたんだね。

その上、貸金業者から約800万円を借りて、ギャンブルや高額な飲食店で飲食を繰り返して300万円を浪費。

ギャンブルや浪費の最終的な負債は約1,100万円。しかも無職でほとんど返済もしなかったんだ。

当然自己破産は認められなかった。

でも先生、ギャンブルでも自己破産は認められるんですよね?
さいむくん
さいむくん
せんせい
せんせい
後で説明するけど、ギャンブルでも借金の程度や、手続きへの協力、更生の程度に応じて認められるんだ。

このケースだと借金の総額も大きく、ほとんど返済してないなどの事情もあり、認められなかったんだね。

なんでもかんでも認められるワケじゃなく、財産を申告するとか、手続きに協力をするとか、今後しっかり更生する姿勢を示すのが大事なんですね。
ともだち
ともだち
裁判年月日 平成17年 1月14日 裁判所名 横浜地裁相模原支部 裁判区分 決定
事件番号 平16(モ)1604号
事件名 破産免責申立事件
裁判結果 不許可 上訴等 抗告 文献番号 2005WLJPCA01140008

自己破産が失敗・認められないケース7つ

せんせい
せんせい
よし、じゃあ自己破産が失敗したり認められなかったりするケースを紹介しよう。以下の7つだよ。

以下の7つは免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)に当てはまる。

免責不許可事由とは、自己破産を認めることができない原因や行動のことをいうよ。

わかりやすくいうと、不正をしたり、手続きを妨害するとダメなんですね。
ともだち
ともだち
自己破産が失敗する・認められないケース7つ
  1. 財産を隠した・他人に贈与した・不当に処分した
  2. クレジットカードを現金化した
  3. 特定の債権者だけ優先して返済した
  4. 借金の原因がギャンブル・浪費だった
  5. 借金が返済できない状態なのに噓をついて借金をした
  6. 破産管財人・裁判所の業務を妨害・虚偽申告など協力しない
  7. 過去7年以内に自己破産などをしていた
さいむくん
さいむくん
ギャンブルや浪費もダメなんですか?
基本はね。ギャンブルや浪費の場合は原則認められないけど、裁判所が裁量で判断することもあるんだ。

それについては「ギャンブルや浪費は本当に自己破産に失敗する?」で解説するよ。

せんせい
せんせい

財産を隠した・他人に贈与した・不当に処分した

せんせい
せんせい
さっきも話したけど、自己破産は一定の財産を持っている場合、没収されて債権者に分配されるんだ。

その代わりに、借金の返済義務がなくなる。

債権者からしたら、借金が0になっちゃうのはあんまりですもんね。
ともだち
ともだち
せんせい
せんせい
そう。だから20万円以上の価値ある財産があるような場合は、20万円を超える部分が没収される。

持っている財産はちゃんと申告しないといけないんだ。

財産隠しや他人への贈与、不当な処分は免責不許可事由に該当するよ。具体的な行為は以下のとおり。

  • 家や車を没収されたくないので名義を変更して隠す
  • 車などを没収されたくないので、傷などをつけて価値を下げる
  • 現金を申告せずタンス貯金にする
  • 隠し口座を作って入金する
  • 架空の会社を起こして、会社へのお金として入金する
  • 絵画など芸術作品をを売却して現金化する
  • 解約返戻金がもらえる保険を隠す
これらの行為は、最悪の場合、詐欺破産罪という罪に問われるリスクがあるから絶対にしないように。

詐欺破産罪になると、以下の刑罰を受ける可能性があるよ。

せんせい
せんせい
  • 10年以下の懲役
  • 1,000万円以下の罰金
  • もしくは懲役と罰金両方

(詐欺破産罪)
第二百六十五条 破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者(相続財産の破産にあっては相続財産、信託財産の破産にあっては信託財産。次項において同じ。)について破産手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第四号に掲げる行為の相手方となった者も、破産手続開始の決定が確定したときは、同様とする。
 債務者の財産(相続財産の破産にあっては相続財産に属する財産、信託財産の破産にあっては信託財産に属する財産。以下この条において同じ。)を隠匿し、又は損壊する行為
【引用:破産法 – e-Gov

ともだち
ともだち
自分の財産が没収されるのが嫌だからって隠しちゃダメなんですね。

特定の債権者だけ優先して返済した

せんせい
せんせい
自己破産では、一定の財産がある場合、没収されて債権者に平等に分配されるんだ。

特定の債権者を優先して返済すること、つまり、偏頗弁済(へんぱべんさい)をするのもアウトだよ。

自己破産ではすべての債権者を平等に扱わないといけないからだね。例えば、家族や友人の借金も、自己破産では免除される。

申し訳ないからと家族や友人の借金だけ返済する行為も偏波弁済になるんだよ。

ちなみに、ローンを完済しても価値が20万円以上なら没収されるから、車のローンを優先的に返済しても意味はないよ。

なるほど。確かに債権者が複数人いる中で、特定の人だけ借金を返済してもらったら不平等だし、他の債権者も納得できないですよね。

でも、税金とか滞納すると余計に面倒になるんですよね。

税金を優先して払うのもダメなんですか?

さいむくん
さいむくん
せんせい
せんせい
税金光熱費などの生活費の支払いを優先するのは偏頗弁済にならないから大丈夫。

税金は破産法百六十三条第三項によって、偏頗弁済にならないと規定されているんだ。

税金は自己破産でも免責されないし、すぐに支払うべきだよ。

偏頗弁済とは

複数の借り入れがあるにもかかわらず、特定の債権者を優先して支払いをすること

借金の原因がギャンブル・浪費だった

せんせい
せんせい
借金の原因がギャンブルや浪費だった場合も、原則自己破産は認められない。

破産法第252条第1項第4号によって、ギャンブルや浪費によって借金などをしたら自己破産は認めないと規定してるからね。

(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
 浪費又は賭と博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
【引用:破産法第二百五十二条第一項第四号-e-Gov法令検索

とはいえ、さっきから話しているように、実務上は認められるケースもある。

これについては「ギャンブルや浪費は本当に自己破産に失敗する?」で詳しく解説するね。

もちろん、原則認められないから、自己破産をするならギャンブルや浪費はすぐやめるべきだね。

せんせい
せんせい

借金が返済できない状態なのに噓をついて借金をした

せんせい
せんせい
借金が返済できない状態にもかかわらず、嘘をついて借金をするのもアウトだよ。

具体的には、破産申立日の1年前から破産手続きの開始が決まるまでに、ボーナスで支払いをできるとか、収入を偽るなどの嘘をついて、借金をしたりローンを組んだりすることだね。

最悪の場合、詐欺罪に問われるリスクもあるよ。

(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
【引用:破産法第二百五十二条第一項第五号 – e-Gov法令検索

実際に借金が返済できず、貸金業者を騙して借り入れを行い、自己破産の際に問題になるケースもある。

こうした行為はそもそも詐欺に該当するから、心当たりがあるのなら弁護士に相談すべきだよ。

せんせい
せんせい

クレジットカードを現金化した

せんせい
せんせい
クレジットカードを現金化することもアウトだよ。そもそもこれはクレジットカード会社との契約でも禁止されているんだ。
クレジットカードを誰かに売って現金にするってことですか?
さいむくん
さいむくん
せんせい
せんせい
そういうことではない。

例えば、クレジットカードでブランド品など高価な商品を買って、買取業者に買い取ってもらうような行為のことをいうんだ。

自己破産にかかる費用を捻出できず、こういう行為をしてしまうケースもあるみたいだね。

そもそも自己破産前提の借り入れは、さっき話した通りダメなんだ。費用に困ったら、手続き前に弁護士などに相談しておこう。

破産管財人・裁判所の業務を妨害・虚偽申告など協力しない

せんせい
せんせい
破産管財人や裁判所の業務を妨害したり、虚偽の報告をしたりして協力しないのもアウトだよ。

例えばこんなケースだね。

  • 浪費やギャンブルで借金をしたことを隠すために、嘘の理由を申告すること
  • 手続きに必要な書類を出さなかった・債権者を申告しない・虚偽の債権者を申告する
  • 破産管財人の指示に従わない など
まあ、聞かれたことや求められたことをしっかりやれば大丈夫だよ。

書類に不備があったまま提出しちゃったらどうしようと心配になってる人も、基本は弁護士に依頼して最終チェックをしてもらえば大丈夫だからね。

せんせい
せんせい

過去7年以内に自己破産などをしていた

せんせい
せんせい
最後はこれ。過去7年以内に個人再生や自己破産をしていた場合も、自己破産が認められない可能性がある。

自己破産などができないケースは以下のとおり。

  • 前回の自己破産をしてから7年経っていない
  • 個人再生の給与所得者再生等をしてから7年経っていない
  • 個人再生でハードシップ免責を受けてから7年経っていない
自己破産の場合、要するに7年は生活を改善する努力はしないといけないよ。
せんせい
せんせい

(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
 民事再生法第二百三十五条第一項(同法第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
【引用:破産法 – e-Gov

自己破産ができないケース4つ

せんせい
せんせい
ここでは、自己破産の条件に当てはまらないことで、自己破産できないケース4つを紹介するよ。
  1. 借金が返済できる収入がある
  2. 自己破産が認められない借金だった
  3. 裁判所の予納金が支払えない
  4. 免責不許可事由に該当する
免責不許可事由に関してはさっき話したから、①~③について解説するね。
せんせい
せんせい

借金が返済できる収入がある

せんせい
せんせい
借金を返済できる収入があるなら、自己破産はできないよ。

(定義)
第二条 この法律において「破産手続」とは、次章以下(第十二章を除く。)に定めるところにより、債務者の財産又は相続財産若しくは信託財産を清算する手続をいう。
(中略)
11 この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(信託財産の破産にあっては、受託者が、信託財産による支払能力を欠くために、信託財産責任負担債務(信託法(平成十八年法律第百八号)第二条第九項に規定する信託財産責任負担債務をいう。以下同じ。)のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)をいう。
【引用:破産法 – e-Gov

破産法によると、①今すぐ返済しないといけない借金を、②今だけでなく継続的に返済できないことと定義している。

例えばケガ・病気で働けないとか、そもそも収入も少なく今後も継続的に返済が難しいよねっていうようなケースでないと自己破産はできないんだね。

せんせい
せんせい
ともだち
ともだち
なるほど。

現状で収入がなくても、預貯金などに余裕があって返済の目処が立つのであれば、自己破産は認められないんですね。

収入があるなら、個人再生などを検討したほうがよさそうですね。

自己破産が認められない借金だった

せんせい
せんせい
自己破産には、自己破産が認められない行為、免責不許可事由がある。

そして、それとは別に自己破産が認められない借金、すなわち、非免責債権(ひめんせきさいけん)というものもあるんだ。

主な非免責債権は以下のとおり。

非免責債権の例
  • 所得税・住民税 など
  • 健康保険料・介護保険料
  • 悪意で人に加えた不法行為にもとづく損害賠償金
  • 故意や過失により人に与えた身体等を害したことに対する損害賠償金
  • 生活費・婚姻費用・養育費
  • 従業員に支払う給料
  • 自己破産の手続きでわざと申請しなかった借金
  • 罰金など
いわゆる税金系や、自分が与えた損害などは免除されないんですね!
ともだち
ともだち
せんせい
せんせい
そうだね。非免責債権は支払い義務が残るんだ。「自己破産が失敗した例」の交通事故なんかもこれだね。

また、「特定の債権者だけ優先して返済した」で話した通り、税金の支払いは偏波弁済にならない。

自己破産できないからこそ優先して支払ったほうがいいよ。税金を滞納すると差し押さえを受けるからね。

同じように、さっき話した免責不許可事由に該当した場合も自己破産は認められないよ。

どんな借金より税金が一番コワイってことがわかりました…。
さいむくん
さいむくん

裁判所の予納金が支払えない

せんせい
せんせい
裁判所の予納金(よのうきん)が支払えないのも、自己破産ができない条件に当てはまるよ。

予納金は、自己破産をするにあたって裁判所に支払う手数料的なものさ。

自己破産を申し立てた段階で、財産をどのくらい持っているのか、そして各裁判所の運用によって、手数料は異なるよ。

東京地裁の場合は、現金が33万円以上ある場合、費用が20万円くらいかかることになる。

もし財産がなければ、手数料も数万円で済むよ。裁判所の予納金が支払えない場合、どうするべきか、弁護士に相談するのが一番だよ。

ギャンブルや浪費は本当に自己破産に失敗する?

さいむくん
さいむくん
先生、さっきギャンブルや浪費が原因の借金は免責不許可事由に該当するから、自己破産が認められないっていってましたよね。

でも、実務上は認められてるってどういう意味なんですか?

ネットで自己破産について調べてたら、ギャンブルとか浪費をしてても自己破産できたって話よく見ますよ。

さっきも話したけど、基本的にギャンブルや浪費が原因の借金は自己破産できない。

でも、裁判所の判断や自己破産を申し立てた人の態度によっては、自己破産を認められる可能性はある。

その辺について、わかりやすく解説していくね!

せんせい
せんせい

免責不許可事由は原則自己破産が認められない

せんせい
せんせい
これはさっきも話したけどギャンブルや浪費は免責不許可事由に当てはまるから、原則的には自己破産は認められないんだ。

(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
 浪費又は賭と博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
【引用:破産法第二百五十二条第一項第四号-e-Gov法令検索

裁量免責制度で自己破産が認められることも

せんせい
せんせい
原則的に自己破産は認められないといったけれど、裁量免責制度(さいりょうめんせきせいど)によって認められる可能性はあるよ。

裁量免責制度は、免責不許可事由に当てはまっていても、裁判所の判断によって自己破産を認めることをいうんだ。

法律に規定されているのに、そんなことできるんですか?
さいむくん
さいむくん
せんせい
せんせい
裁量免責も法律で規定されているんだよ。

(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
(中略)
 前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。
【引用:破産法 – e-Gov

もともと自己破産は、債務者の生活再建や経済的な再生を図ることを目的としてるんだ。

ギャンブルや浪費は褒められた行為じゃないけど、それだけでダメってしてしまうと、更生の機会も奪うことになるよね。

裁判所の計らいみたいなものだ。

せんせい
せんせい

(目的)
第一条 この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。
【引用:破産法 – e-Gov

経済的に更生する姿勢を示すことが重要になる

さいむくん
さいむくん
裁判所の判断ってどういうことなんですか?

裁判所の人の好き嫌いやえこひいきじゃないですよね?

そんなことはしないよ。さっきの条文を見てみよう。
せんせい
せんせい

(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
(中略)
 前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。
【引用:破産法 – e-Gov

せんせい
せんせい
裁判所は、自己破産に至る経緯や、その他の事情を考慮して、自己破産を認めることが相当って時に、認めるって書いてあるよね。

裁判所は経済的に更生する姿勢があるかどうかを判断基準としているよ。

裁量免責で重視される点
  • 免責不許可事由の程度(ギャンブルや浪費の借金の大きさなど)
  • 裁判所や破産管財人の調査や聞き取りに協力したかどうか(申告した内容は正しいか・面接や債権者集会に出席したか・予納金を支払ったか など)
  • 経済的に更生する意志や具体的な行動があるかどうか
これらをクリアしたからといって確実に裁量免責を得られるとは限らない。

でも、最低限この部分は重視されるから、やっぱり自己破産の手続きに協力する姿勢は重要だよ。

また、借金の原因がギャンブルや浪費であれば、今後こうした行為から足を洗い、更生する姿勢を示そう。

せんせい
せんせい
さいむくん
さいむくん
例えば、どんなことをすればいいんですか?もうパチンコ行かないとか宣言するとか?
そうだね。それについては、この後教えてあげるね。
せんせい
せんせい

自己破産を失敗しないためのポイント

せんせい
せんせい
ここでは自己破産を失敗しないためのポイントを伝授しよう。
自己破産を失敗しないためのポイント
  • ギャンブルや浪費をやめる
  • 免責不許可事由に該当する行為は絶対にしない
  • 予納金が支払えない時は裁判所に相談する
  • 自宅を売却して費用を工面する
  • 不安なら弁護士に相談する

ギャンブルや浪費をやめる

せんせい
せんせい
さっきも話したけど、裁量免責を得たいのであれば、最低限ギャンブルや浪費をやめることが大事だよ。

その上で、更生する姿勢を示すこと。例えば、ギャンブル依存症や買い物依存症の治療を受けるとか、家族に監督してもらうとかだね。

単にパチンコをやめるって宣言するだけでなく、行動をともなうことが大事。

自己破産に制限はないけど、前回と同じ理由での自己破産は認められにくい。1度きりの自己破産だと思って、生活を改善していこう。

そうですね。ギャンブルや浪費を繰り返しても、またお金をかけて自己破産するんじゃ意味がないですもんね…。
ともだち
ともだち

免責不許可事由に該当する行為は絶対にしない

せんせい
せんせい
借金の原因がギャンブルや浪費の場合はもう仕方ないけど、それ以外の免責不許可事由に該当するような行為は絶対しないようにしよう。

ギャンブルや浪費なら、行動によっては裁量免責が認められる。

でもそもそも財産を隠すとか、自己破産の手続きに協力しなかったりすると「悪質」だと判断されて自己破産が認められない。

財産を隠した・他人に贈与した・不当に処分した」でも話したけど、詐欺破産罪に問われる恐れもあるからね。

予納金が支払えない時は弁護士に相談する

せんせい
せんせい
予納金が支払えない… そんなときは弁護士に相談するべき。

なんでかっていうと、裁判所が分割払いに対応してくれる可能性があるからなんだ。

弁護士に相談すれば、弁護士経由で裁判所にかけあってくれるかもしれない。

予納金が用意できそうにないなら、弁護士か裁判所の受付窓口に相談に行こう。

自宅を売却して費用を工面する

せんせい
せんせい
もし予納金が払えないなら、自宅を売却して費用を工面するのも1つの方法だよ。

住宅ローンが返済できないなら、「任意売却」って方法もある。債権者と相談して、市場価格に近い金額で自宅を売却することだね。

あれ?でも自己破産前に特定の債権者と相談して自宅を売ってもいいんですか?偏波弁済になりそうですが…。
さいむくん
さいむくん
せんせい
せんせい
大丈夫。住宅ローンの場合、抵当権といって、ローン会社が優先的に分配を得られる権利を持ってるんだ。

自己破産をする状況だと、自宅を持ち続けるのは難しいから、売却は積極的になってもいいと思う。

でも不安な人は一度弁護士に相談した方が確実だよ。

不安なら弁護士に相談する

せんせい
せんせい
自己破産が失敗する確率は約1%」で話した通り、自己破産の失敗率は極めて低い。

でも書類の不備や、うっかり免責不許可事由に該当して認められないなんてこともないとは言い切れない。

自己破産について、少しでも不安があるなら弁護士に相談するといいよ。

自己破産は司法書士・弁護士どっちがいい?

さいむくん
さいむくん
先生、自己破産に関して弁護士に相談するってのはわかったんですか、司法書士じゃダメなんですか?

司法書士は弁護士より安いって聞いたので依頼したいんですが…。

そうだね。費用だけでいえば、司法書士は20~30万円。弁護士は40~50万円くらいだ。

ただ、弁護士と司法書士では対応できる業務に違いがある。

せんせい
せんせい
専門家 違い
司法書士 書類の作成までなら対応できる。
弁護士 すべての手続きができる。
せんせい
せんせい
債務整理をできる司法書士は法務大臣の認可を受けた「認定司法書士」だけなんだ。

ただし、彼らは対応できる案件に限りがある。1社140万円以上の借金問題の対応や、地方裁判所で行われる裁判の手続きはできない。

自己破産が行われるのも地方裁判所なんだ。だから、認定司法書士は安いけど、書類作成のみなんだ。

なるほど…書類作成で20~30万円か…フルにサポートできる40~50万円かってことですね…。
ともだち
ともだち

さいむくん
さいむくん
弁護士に依頼した方がいいなっていうのはなんとなくわかりました。

でも弁護士費用って高いんですよね?

たしかに司法書士に依頼するよりは高いよ。

でも、弁護士費用は分割払いできる事務所が多いから、心配しなくて大丈夫。

せんせい
せんせい

自己破産をした人の約90%は弁護士に依頼している

せんせい
せんせい
ちなみに、日弁連によると2020年に自己破産を弁護士に依頼している人の割合は、約90%。
司法書士は約7%くらいしかいないんですね…!
ともだち
ともだち

【引用:日本弁護士連合会 – 2020年破産事件及び個人再生事件記録調査【報告編】

せんせい
せんせい
もちろん、弁護士に依頼することが自己破産の成功を保証するものではない。

でも約90%の人は弁護士に依頼しているし、現に自己破産が失敗する確率は約1%くらいなんだ。

弁護士費用は確かに安くはないけど、今は分割払いを受けている所がほとんどだからね。

自己破産の成功を高めるために、よく考えてみてほしいな。

自己破産に失敗したらどうなる?

さいむくん
さいむくん
自己破産をする人の約90%が弁護士に依頼しているのはわかりました。

でもまだ迷ってるんですよね…。もし自己破産に失敗したらどうなっちゃうんですか?

そうだね。じゃあ自己破産に失敗したらどうなるか解説していくよ。
せんせい
せんせい

債権者の取り立ては再開する

せんせい
せんせい
もし自己破産が認められないなど、失敗した場合はまず債権者の取り立てが再開してしまうよ。
ええっ!? また取り立てのストレスに追われるんですね…

自己破産に失敗してからどのくらいで再開するんですか?

さいむくん
さいむくん
せんせい
せんせい
再開時期は業者によって異なるけれど、基本的にはすぐに再開すると思っておいた方がいいね。

失敗したとはいえ、自己破産を申し立てたわけだから、債権者も強制的に借金を回収できるよう差し押さえに出るかもしれないよ。

手続き期間中の遅延損害金も請求される

せんせい
せんせい
自己破産が失敗に終わると、手続き期間中の遅延損害金も請求されてしまうよ。

遅延損害金は、支払いを滞納したことに対する罰金みたいなものさ。

自己破産の手続きが開始されると、債権者は取り立てを禁止されるんだ。弁護士に依頼をした場合も同様だね。

(取立て行為の規制)
第二十一条 貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
(中略)
 債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。
【引用:貸金業法 – e-Gov

手続き前は偏波弁済もあるから、支払いを止める。でも遅延損害金は滞納初日から加算され続けるんだね。

万が一自己破産が失敗すると、遅延損害金も含めて請求を受ける恐れがあるよ。

せんせい
せんせい

差し押さえの可能性もあるので別の債務整理をする

せんせい
せんせい
さっき話した通り、自己破産に失敗したまま放置していると、財産を差し押さえられてしまうリスクがある。

だから、自己破産に失敗した時点で、別の債務整理(さいむせいり)を検討しよう。

自己破産が失敗・できないときの対処法

さいむくん
さいむくん
自己破産が失敗するとやばいことになるのはわかりました…万が一自己破産が失敗したり、できないときはどうしたらいいんですか?!
さいむくん、落ち着いて。対処法はある。自己破産が失敗したりできなかったりしたときの対処法を紹介するよ。
せんせい
せんせい
自己破産が失敗したりできなかったりした時の対処法
  • 即時抗告
  • 任意整理
  • 個人再生
  • 税金などは役場に相談

即時抗告

せんせい
せんせい
自己破産に失敗したら、まずは即時抗告(そくじこうこく)をしよう。

即時抗告は、裁判所が下した判決に対して不服を申し立てることなんだ。

でも、免責不許可となってから1週間以内に申し立てないといけないから、すぐに手続きをしないとダメだよ。

ただ実際には、決定が覆るケースは少ないから、現実的ではないかもしれない。手段として覚えておいても損はないよ。

収入があるのなら任意整理

せんせい
せんせい
収入があるのなら任意整理もアリだね。

任意整理は貸金業者と交渉して、利息をカットする手続きのことさ。

整理する対象の1社につき2~5万円でできるから、自己破産よりは安く手続きができるよ。

ただ、3~5年で完済しないといけないから、完済の目処をつけれることが申し込みの条件となるね。

現状で返済が厳しいって人はこの後紹介する個人再生を検討しよう。

免責不許可事由・自宅を残したいなら個人再生

せんせい
せんせい
免責不許可事由に当てはまる、または自宅を残したいなら個人再生がいい。

個人再生なら借金の原因を問われることはないし、財産を没収されることもないよ。

ただし、任意整理と同じく、減額できた分は3年で完済することになる。安定した収入が必要になるのは同じだね。

税金などは役場に相談

せんせい
せんせい
税金などは役場に相談するといい。

自己破産が認められない借金だった」にもあるように、税金などの非免責債権は自己破産で免責をされたとしても免除されることはない。

ただ、支払いが難しいなら役場に相談することで分割払いにしてくれる可能性がある。

税金を滞納し続けても、差し押さえを受ける恐れがあるから、支払いに困っているならすぐに最寄りの役場に相談へ行こう。

自己破産の失敗の確率を下げたいなら弁護士に相談する

せんせい
せんせい
これまで色々話してきたけど、少しでも自己破産を失敗する確率を下げたいのなら、弁護士に相談しよう。

弁護士に相談するメリットは以下のとおり。

  • 書類の作成から裁判まですべてをやってくれる
  • 書類の作成でミスをする可能性が低い
  • 弁護士に依頼することで取り立てを一時的に止められる
弁護士費用は安くないから、依頼をためらう人もいると思う。でも免責不許可事由に該当すると、自己破産の手数料が高額になってしまうケースもあるんだ。

自己破産では財産が一定以上あると、財産の調査・分配のために裁判所が破産管財人を選任する。

同じように、免責不許可事由に該当した場合も破産管財人が選任される。

そうすると、破産管財人の報酬が発生して手数料も高額になってしまうんだ。

免責不許可事由を回避するためにも、依頼するかは別として自己破産はまず弁護士に相談した方がいいよ。

せんせい
せんせい
さいむくん
さいむくん
マジですか…。うーん…最近では無料相談やLINEで手軽に相談できるって聞くし…不安なのでまず弁護士に相談してみます!

まとめ

ともだち
ともだち
黒板に今日のおさらいをまとめるから、少し復習していこう!
今日のまとめ
  • 自己破産に失敗する確率は約1%程度
  • 自己破産が認められない免責不許可事由には注意する
  • 自己破産の条件を満たさないと自己破産はできない
  • ギャンブルや浪費は経済的な更生を示すことが重要
  • 自己破産をした人の90%は弁護士に依頼している
  • 少しでも失敗の確率を下げるために弁護士に無料相談しよう
確かに、自己破産にたはお金がかかるけど、失敗しちゃったらまたお金がかかることになるよね…。

それなら失敗する確率を少しでも下げるために、やっぱり弁護士に相談しようかな!

さいむくん
さいむくん
弁護士に相談することで
借金を大幅に減らせる可能性があります。
催促の電話を止めたい
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著者情報

この記事の監修者
赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

監修者の詳細なプロフィール
この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。

20代後半に作ってしまった借金100万円を自力で完済した。

筆者の詳細なプロフィール