でも、自己破産したら持ち家って没収されちゃうんですよね?
自己破産をすると、一定以上の価値がある財産は基本的に裁判所によって没収されて、お金に換えたうえで債権者(お金を貸している側)たちに分配されてしまうんだ。
持ち家やマンションなどの不動産も、基本的には没収対象になるね。
自己破産とは、裁判所に申し立てて借金の返済義務を帳消しにしてもらう手続きです。
自己破産をすると持ち家は基本的に没収となりますが、状況によっては今の家に住み続けられる可能性もあります。
この記事では、以下の3点を中心に自己破産と家の関係について解説していきます。
- 自己破産をした時の持ち家の処分の流れ
- 自己破産後も持ち家に住み続けるための方法
- 持ち家がある方が自己破産する時の注意点
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自己破産をすると持ち家はどうなる?
結論として、自己破産をすると、破産者名義の持ち家やマンションなどの不動産はすべて没収されてしまいます。
ローンが残っているかどうかにかかわらず、ほとんどのケースで売却処分されます。
原則として裁判所によって処分される
自己破産を申し立てる際には、現金や預貯金、不動産などの財産をすべて裁判所に申告する必要があります。
自己破産をするとほぼすべての借金の返済義務が免除されますが、返せなかった借金の穴埋めにするために、一定以上の価値がある財産はお金に換えて債権者に渡さなくてはいけないためです。
破産者が持ち家などの不動産を持っている場合は、裁判所から選ばれた「破産管財人(はさんかんざいにん)」という担当者が、自己破産の手続き開始以降、破産者の財産を管理します。
住宅ローンをすでに完済している持ち家は、破産者の財産となっているため、自己破産の際に破産管財人によって売却されて、債権者に分配されます。
また、住宅ローンの支払い義務は免除されますが、持ち家は結局破産管財人によって売却処分されることになります。
破産管財人はこうした不動産を売却できるルートを持っているかと思いますし、場合によっては管財人から任意売却を持ちかけるケースもあるようです。
抵当権がついている場合はローン会社によって競売にかけられるケースもある
ローン返済中の持ち家には、返済が滞った際のリスクに備えて、ローン会社の抵当権がついている場合がほとんどです。
抵当権とは、ローンを組んで不動産を購入した人がもしも途中で返済できなくなった場合に、その不動産をローン会社が売却して代金を受け取ることができる権利です。
自己破産をした方が住宅ローンの返済途中である場合は、ローン会社が抵当権を行使して、持ち家などを競売にかけて処分するケースもあります。
ただし、実務上はローン会社主体で売却を行うことは少なく、破産管財人によって処分されることが一般的です。
自己破産をしても家に住めるケース
自己破産をすると、破産者の持ち物である家は基本的に処分されてしまいます。
しかし、以下のようなケースでは自己破産後も今の家に住み続けられます。
- 親や家族名義の家の場合
- 家が賃貸物件の場合
- 持ち家が古く価値がない場合
- 競売や任意売却で買い手が見つからない場合
それぞれ簡潔に紹介していきます。
親や家族名義の家の場合
自己破産の際に処分されるのは、破産者本人名義の財産のみです。
したがって、自己破産をする方の親や家族の名義になっている持ち家は没収される心配はありません。
持ち家が誰の財産にあたるかは、登記簿上の名義によって判断されるため、戸籍や居住状況などは一切関係ありません。
そのため、「親が購入した持ち家に1人で住んでいる」「家族名義の家にほかの家族と同居している」といったケースでは、自己破産をしても今の家に住み続けられます。
家が賃貸物件の場合
賃貸物件は大家さんの財産であり、居住者は家賃を支払って大家さんから借りている状態です。
そのため、自己破産をしても賃貸で借りている物件や賃貸契約自体が処分されるということはなく、今のまま住み続けられるでしょう。
また、自己破産の事実が大家さんにバレることは基本的にありませんし、バレたとしても破産を理由に追い出すことは法律上できません。
ただし、自己破産をすると未納になっている家賃も免除されます。
自己破産時に家賃を滞納している場合のみ、契約通りの家賃を受け取れなかったということで、契約を解除される可能性はあります。
持ち家が古く価値がない場合
持ち家やマンションなどは、売却すれば一定の価値になるケースがほとんどです。
そのため、自己破産の際には破産管財人によって没収されて、債権者へ売却益を分配されてしまいます。
ただし、持ち家があまりに古く売却してもお金にならないと判断された場合は、例外的に没収を免れられます。
競売や任意売却で買い手が見つからない場合
競売や任意売却によって買い手が見つからないケースも考えられます。
買い手が見つからなかった場合は、管財人は持ち家を「放棄」し、破産者の財産として返還します。
自己破産をした時の持ち家の処分の流れ
自己破産をすると、基本的に裁判所の破産管財人によって持ち家は処分されます。
破産管財人による持ち家の処分は、以下のような流れで進みます。
- 任意売却手続き
- 買い手が見つからなかった場合は競売により売却
- 売却決定・退去
自己破産手続き開始から、不動産の売却が決まり退去を命じられるまでの期間は3ヶ月〜6ヶ月程度です。
①任意売却手続き
破産者が持ち家などの不動産を所有している場合は、破産管財人が不動産の任意売却の手続きを進めます。
任意売却とは、債権者の同意のもと、物件を売却する手続きのことです。
破産管財人は、破産者の財産を少しでも高く売却して債権者に分配を渡す必要があります。
そのため、競売よりも高い売値がつきやすい任意売却の手続きをまずは検討するのが一般的です。
破産管財人は、不動産会社の協力のもと、破産者の持ち家を不動産市場に売り出し買い手を探します。
任意売却の買い手が見つかったら、破産管財人の名義で売買契約を締結し、破産者も立ち会いのもと、物件の引き渡しを行います。
②買い手が見つからなかった場合は競売により売却
任意売却で買い手がつかなかった場合は、破産管財人は競売によって不動産を売却します。
競売は、裁判所主体で、オークション形式で物件の買い手を探す手続きです。
原則として、「期間入札」といって最も高い買値で入札した方が落札者となる売却方法で競売が行われます。
期間入札で買い手がつかなければ、売値を下げて「特別売却」という手続きが取られます。
特別売却によって複数回にわたり値段を下げても買い手が見つからない場合は、裁判所が競売をあきらめ、住宅が破産者の財産に戻ってくるケースもあります。
③売却決定・退去
任意売却または競売によって買い手が見つかったら、売却や所有権移転登記などの手続きが破産管財人主導のもと行われ、破産者は持ち家から退去することになります。
この際に様々な書類を提出するように求められる可能性もありますので、破産管財人の指示にはしっかりと従いましょう。
一般的には、自己破産手続きの申し立てから3〜6ヶ月程度で退去が決まるケースが多いです。
自己破産をしたからといってすぐに家を追い出されるわけではありませんが、自己破産の申し立てをしたらなるべく早く引っ越し先の賃貸物件を探しておきましょう。
自己破産後も持ち家に住み続けるための方法
自己破産後も持ち家に住み続ける方法は主に以下の4つです。
- 持ち家を家族に購入してもらう
- 持ち家をリースバックする
- 自由財産の拡張を認めてもらう
- 任意整理や個人再生など自己破産以外の手続きを検討する
持ち家を家族に購入してもらう
持ち家を家族に購入してもらえば今の家に住み続けられます。
ただし、家族などの第三者に持ち家を購入してもらう場合は、破産管財人が行う任意売却において、相場と同じ価格を支払ってもらう必要があります。
相場より安く購入されてしまうと、債権者に分配できるお金が少なくなり、自己破産の手続きで守るべき債権者の利益に反するためです。
また、任意売却の際は分割払いは認められません。
破産者の不動産を購入する目的で銀行から融資を受けられる可能性は低いため、一括払いで購入する必要があります。
持ち家をリースバックする
リースバックとは、今住んでいる持ち家を売却した上で、買い手と賃貸契約を結び、家賃を払うという形で今の家に住み続ける方法です。
リースバックの契約の際に「再売買の予約」をして、将来お金を貯めてから買い戻すことも可能です。
ただし、リースバックの場合、相場よりも家賃が高めに設定されたり、契約期間が制限されていたりするなどのデメリットもあるため、注意が必要です。
自由財産の拡張を認めてもらう
自己破産をしても、生活に必要不可欠な最低限の財産は「自由財産」として手元に残しておくことができます。
住んでいる方が身体的な障がいを持っていて、今の持ち家を手放すと最低限の暮らしもままならなくなるなど特別な事情があれば、持ち家も自由財産として認めてもらえる可能性があります(自由財産の拡張)。
自己破産を依頼した弁護士に相談して、自由財産の拡張ができるかどうか確認しましょう。
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任意整理や個人再生など自己破産以外の手続きを検討する
持ち家を残すために一番確実な方法は、任意整理や個人再生など自己破産以外の手続きによって借金を減額することです。
ただし、任意整理や個人再生は、自己破産とは異なり借金が免除されるわけではなく、一定額減額されるのみです。
手続き後も返済を続けていく必要があるため、安定した収入がある方でないと難しいでしょう。
自分にどの手続きが適しているかを判断するには、借金額や生活状況など様々な要素を加味する必要があるため、借金問題の専門家である弁護士に相談しましょう。
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持ち家がある方が自己破産する際の注意点
ここでは、持ち家がある方が自己破産する時の注意点を紹介していきます。
自己破産前の名義変更は絶対にNG
自己破産で没収されるのは、破産者名義の財産のみです。
そのため「自己破産の手続き開始前に名義を変えれば没収されずに済むのでは?」と考える方もいるかもしれません。
しかし、自己破産前の名義変更は絶対に避けてください。
破産管財人は破産者の財産を過去にまでさかのぼって調査するため、名義変更は必ずバレてしまいます。
また、破産管財人の権限によって名義変更が無効化されます(否認権)。
また、自己破産前の名義変更は、不当な「財産隠し」とみなされる可能性が高く、自己破産自体が認められなくなる恐れもあります。
夫婦や家族との共有名義の不動産も没収対象になる
住宅ローンを組んで不動産を購入した方は、夫婦や家族と共有名義で購入した方も多いはずです。
共有名義の財産も、破産者名義の持分のみが没収対象になります。
しかし、自己破産をした場合、破産者の持分が債権者のものとなるため、持ち家の所有者は債権者と配偶者という形になってしまいます。
自宅の売却なども自由にできなくなりますし、実務上では裁判により共有持分が解除されてしまうケースが多いです。
そのため、結局持ち家を処分するケースがほとんどです。
共有名義は連帯債務者(保証人)に請求が行く
ローンが残っている共有名義の持ち家が没収された場合は、ローンの残債は連帯債務者(連帯保証人)がすべて背負うことになります。
そのため、連帯債務者に残債全額を支払うだけの経済力がなければ、連帯債務者も破産者と一緒に自己破産をしなくてはいけない可能性もあります。
自己破産と持ち家に関してよくある質問Q&A
最後に、自己破産と持ち家に関してよくある質問をまとめたのでぜひ参考にしてください。
自己破産したらすぐに退去しないといけない?
自己破産をしたあと持ち家は基本的に処分されますが、買い手が見つかるまでは今の家に住み続けられます。
自己破産手続き開始から退去するまでは3~6ヶ月ほどの期間がかかるケースが多いです。
自己破産前に持ち家は売れない?
自己破産前に持ち家を任意売却することは可能です。
自己破産前に任意売却すると、自己破産時の財産が少なくなり、自己破産の手続きの費用があまりかからない「同時廃止事件」として進められるなどのメリットがあります。
任意売却については、自己破産を依頼する弁護士についてよく相談してから行いましょう。
自己破産で離婚する場合家はどうなる?
自己破産と同時に離婚を考えている場合でも、破産者名義の家でなければ今の家に住み続けられます。
離婚するかしないかにかかわらず、破産者名義もしくは破産者の共有名義の持ち家は没収対象になります。
また、同様に、自己破産をする夫名義の家に離婚後の妻が住み続けることはできません。
自己破産をしたら家の購入や賃貸契約はできない?
自己破産をした後でも家の購入や賃貸契約は可能です。
ただし、自己破産後最長7年間はブラックリストとなり銀行からの融資を受けられない可能性が高いため、持ち家を購入するのは難しいのが実情です。
賃貸契約については、自己破産後でも問題なく契約できます。
ただし、家賃保証会社との契約において、ブラックリストを参照として審査を行う信販系の保証会社だと、審査に通らない可能性があります。
審査に通らない場合は、信販系以外の家賃保証会社を利用しましょう。
まとめ
- 自己破産をすると原則として持ち家などの不動産は3~6ヶ月で処分される
- 自己破産によって没収されるのは破産者本人名義の財産だけなので、親や家族名義の家には住み続けられる
- 没収を避けるために自己破産前の名義変更はNG
- 自己破産後も持ち家に住み続けたい場合は弁護士に相談しよう
だからといって、自己破産前に名義変更をするのは絶対にダメ、と…。勉強になりました!
他にも自己破産について色々と気になることがあるので、一度弁護士に相談してみます!
企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。