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注目のテクノロジー、ブロックチェーンの特許は世界にどういう影響を及ぼすか?

2017年から2018年にかけての最もホットなテクノロジーの一つは間違いなくブロックチェーンでした。ブロックチェーンは、テクノロジーの開発だけではなく特許の出願件数においてもその数が急激に増加しており、今回の記事では、そうしたブロックチェーンにまつわる特許の状況について解説させていただきます。

1. ブロックチェーンとは?

ブロックチェーン(英語:Blockchain)とは、分散型台帳や分散型ネットワークと呼ばれる

テクノロジーであり、ビットコインの中核技術であるといわれています。ブロックチェーンは、「ブロック」と呼ばれる順番のデータをもったレコードが連続的に増加していくリスト構造を持っています。それぞれのブロックには、生成時間を記録したタイムスタンプと、前のブロックへのリンクを持っています。ブロックが生成される際には、一つ前のブロックのハッシュ値を書き込むため、ハッシュ値をたどっていくことで、前後のブロックとの前後関係を把握可能になるようになっています。

特徴としては、

  • データの改ざんが不可能
  • 中央集権的な管理者を必要としない といった特徴を持っており、こうした特徴を生かしてブロックチェーン、スマートコントラクト、仮想通貨といった様々な分野に適用可能な技術となっています。

2. 特許とは?

特許とは、ある技術を発明をした個人や法人に対して、その発明の独占権を与えてその経済的な利益を保護する制度です。
したがって、特許となるためには、以下の4つの「発明」の要件を満たす必要があります

  1. 自然法則を利用
  2. 技術的な思想
  3. 創作性
  4. 高度なもの

それでは、以上4つについて解説します。

①自然法則を利用

自然法則」とは、自然界における現象の間に成り立っている必然的・一般的な関係を示した法則のことで、科学的な法則などがこれにあたります。
一方、ゲームのルールなどはこれに該当しません。

②技術的な思想

技術」とは、ある結果を得るための具体的な手段であり、誰が行っても同じ結果が得られるもののことです。
思想」とは、アイディアであり、単なる情報の提示は「技術的な思想」とはなりません。

③創作性

創作」とは、新しいものを作り出したり、考え出したりすることであり、すでに存在しているものを見つけ出すことは、「創作」ではなく発見です。
したがって、自然界にある物質などを発見しても特許にはなりません。

④高度なもの

高度なもの」は、実用新案法に定められている「考案」と区別するために設けられたものですが、実務的にはこの条件は審査の際には考慮されないようになっています。

以上の4つの条件に加え、特許で保護されるためには次の特許要件を満たす必要があります。

3. 特許要件として必要なものは?

繰り返しにはなりますが、「特許要件」としては、主には次の3つが挙げられます。

  1. 産業上の利用可能性
  2. 新規性
  3. 進歩

それでは、以上3つについて解説させていただきます。

①産業上の利用可能性

産業上の利用可能性」とは、産業上利用することができるかどうかであり、これに該当しないものは特許にできません。例えば病気の治療法や、純粋に数学的な定理などはこれに当たるため、特許となりません。

②新規性

新規性」とは、「新しい」ということを意味し、出願時点ですでに公然と知られている発明や書籍・インターネットなどに掲載された発明は、世間に知れ渡っているため「新規性」がありません。

③進歩性

進歩性」とは、発明が容易にはできないという意味です。技術分野が属する知識を持っている人が、既存の発明をもとにして簡単に発明することができるようなものに「進歩性」はありません。

以上のように、「発明」と「特許要件」の条件をいずれもみたしている場合、特許庁に特許の出願をし、それが認められれば特許で保護されることになります。

4. ブロックチェーン特許の出願件数は

こちらの図は、US,EP(欧州特許)、およびPCT出願のブロックチェーン技術に関する出願状況と登録状況を示したものであり、2014年以降に急増しているのが見て取れます。特許出願の公開が、ほとんどの国で出願から18か月かかることを考えると、現在は2017年中の出願までの情報が入手可能ですが、2017年はさらに増加していているでしょう。

国別に詳細にみていきますと、アメリカでは、2012~15年の間に「仮想通貨」や「ブロックチェーン」に関連する特許出願が、最低でも83件出願されています。2017年において、アメリカで申請されたブロックチェーン特許は97件に上り、USPTO(アメリカ特許商標庁)が2011年年の1月以降に受理し、その後公開されたブロックチェーン関連特許は全部で、約700件に上っています。

今まで特許の主要な特許出願の国はアメリアでしたが、ブロックチェーン技術に関しては中国はアメリカを上回っています。2017年では、225件のブロックチェーン特許が中国において申請されており、これは中国当局の後押しもあって国内含めた特許出願を推奨しており、世界の他の国を大幅に凌駕している状態です。

こうした状況は中国の政策を反映した結果でしょう。

2018年5月に中国産業情報省が発表した「2018年中国ブロックチェーン産業白書」には、

○ブロックチェーンは今後3年以内に実体経済に広く配備され中国のデジタル経済の確立のためのサポートをしていく

○ブロックチェーンの監督体制と標準体系が改善されることで、産業開発の基盤が統合される

といったことが記載されており、中国政府がブロックチェーンに積極的にイニシアティブをとろうとしていることが見て取れます。

また、中国では企業が知的財産管理先進企業として認定されると、補助金が与えられたり、表彰されたりといった制度もあり、アリババやシャオミーなどのグローバル中国企業は、知財部門を積極的に拡大していっています。 こうした動きの契機となったのが、2008年に公布された「国家知的財産戦略綱要」であり、2011年からは税金面で知的財産に関するサービスが優遇されたり、2014年には北京・上海・広州に知的財産関連の専門裁判所が開設されたりと、制度上でも知的財産保護の整備が進んでいるようです。

5. ブロックチェーン関連の特許出願の多い企業は?

それでは、企業別のブロックチェーン関連技術の特許出願状況についても見ていきましょう。

2018年8月IPRdaily.cnが発表した「TOP100ブロックチェーン企業特許ランキング」リストを参照しています。レポートによると、ブロックチェーン技術にといては、中国とアメリカの企業が大部分を占めており、ブロックチェーンに関連する特許を20件以上出願している企業は36社あります。この数値は、これまでに各国に出願された特許の件数を集計しており、同じPCT出願などによる国ごとの重複は除外しているようです。

中国企業はTOP10のうち半数を占め、1位のAlibaba(関連会社のAntFinancial含む)は90件の特許を出願しています。また、中国の中央銀行である中国人民銀行(People’sBankofChina)は44件の出願があり5位に、テンセントが40件、Fuzamei(33.cn)が39件、暗号通貨のサービスであるVechainが38件と続いています また、アメリカ企業ではアメリカ最大の特許出願企業でもあるIBMを筆頭に、バンクオブアメリカ、マスターカード等の金融企業が並びます。アクセンチュア、グーグル、インテルなども名を連ねています。

6. 各企業の代表的な特許の内容は?

日本の仮想通貨取引所であるBitflyerも特許に力を入れている企業です。2015年以降、公開されているだけでも合計で15件の特許を出願しています。

例えば、同社の取得している特許第6199518号は、以下のような権利範囲となっています。

【請求項1】

パブリックノード群とプライベートノード群とを有するネットワークにおいて前記プライベートノード群を構成するプライベートノードにおける処理方法であって、

前記パブリックノード群から受信した複数のトランザクションを有するブロックを生成するステップと、

前記ブロックの承認依頼を前記プライベートノード群を構成する他のプライベートノードに送信するステップと、

前記他のプライベートノードのうちの少なくともいずれかから承認結果を受け取るステップと、

前記他のプライベートノードのうちの所定の数により承認が得られたことを条件に前記ブロックを確定させてブロックチェーンに追加するステップとを含み、

ブロックの新たな承認依頼は、前記プライベートノード群を構成する他のプライベートノードにおけるブロックの確定がなされるまで待機することを特徴とする処理方法。

これは、ブロックチェーンが公開されたパブリックなノード(ここでは、個人の端末と仮定)と、プライベートな限定されたノードとを有しています。パブリックノードは、取引情報を記したトランザクションを生成する役割を担い、その後の処理は、公開鍵暗号を用いた多重署名という低コストかつ高速なコンセンサスアルゴリズムを用いて、プライベートノード同士が協働することによって行われます。

トランザクションの生成については、信頼できないノードを含み得るパブリックノードとして広く認めつつ、その後のブロックの生成や確定といった処理は、信頼できるプライベートノードに制限します。また、別のプライベートノードが同一のトランザクションから重複してブロックを生成するのを防ぐために、ブロックが確定するまでは承認依頼は待機するようにされています。

このようにすることで、パブリックノード方式によって、広く公開した汎用性の高いサービスに適用できるようにしながらも、プライベートノード方式で処理の早い公開鍵暗号での記録の信頼性を担保するということができるようになります。

7. まとめ

特許においてブロックチェーンは、モノの形状や構造などの特許と比較した場合、構成が特殊であり、その特許性や権利の帰属にも注意が必要です。

ブロックチェーンに関する特許を検討するときには、専門家の意見を聞きながら、特許可能なポイントなどを明確にしていく方がよいでしょう。

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