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ECサイトの技術は特許になるの?最近のECサイト特許を調べてみた結果は・・・

ECサイトに関する特許は、Amazonの1Click特許をはじめビジネスモデル特許の代表的な事例となりました。主要なプレーヤーが保有していることが多いこの領域ですが、スタートアップでも新しいアイデアがあれば特許取得も不可能ではありません。

今回は、そんなECサイト関連特許を取り上げてみたいと思います。

1.ECサイトにまつわる技術は一体どんなものがある?

ECサイトに関連する技術(テクノロジー)は、最近でも新しいものがどんどん開発されて行っています。ECサイトにおいて重要な指標は、サイトに訪問した利用者が実際に商品を購入するCVR(コンバージョンレート)という数値です。この数値を改善するというのが、ECサイトにおいては、最も重要なものであるため、様々な技術が開発されているのです。

例えば、日本最大のファッションECのサイトであるZOZOTOWNでは、年間約3000億円の取引があると言われています。これくらいの規模となるとCVRが1%改善されるだけでも、売上に対するインパクトは数十億~百億円以上になるといわれています。

最近のEC関連技術として最もホットだったものの一つが、チャットbotでしょう。スタートアップ企業も多く導入していると思います。チャットbotでは、サイトに訪問するとチャット用の画面が立ち上がりそこで、例えば「赤い靴がほしい」と言うと、ニーズに合った商品をレコメンドするといった使い方が想定されています。こちらでは自然言語解析などの技術と組み合わされて、人の接客と同じようなことをチャットbotが行うようになるでしょう。

また、似たような技術としてはWeb接客と呼ばれるテクノロジーも導入企業が増えてきました。こちらは訪問ユーザーのCookie情報に基づき、ユーザーを分析し、ユーザー属性に合わせたクーポンや商品などを自動で提示するというものです。 このように様々なテクノロジーがECサイトでは現在取り上げられています。

2.代表例であるAmazonの1Click特許のおさらい

こうしたECサイトの新しいテクノロジーが出てくる中で、元祖EC特許とも言えるAmazonの1Click特許の内容についておさらいしてみましょう。1Click特許は、1999年にAmazonにより出願された特許であり、2017年に特許の効力が切れました。

第4937434号「ギフト発送方法及びそのシステム」

【請求項1】 アイテムを注文するためのクライアント・システムにおける方法であって、前記クライアント・システムのクライアント識別子をサーバ・システムから受信することであって、前記クライアント識別子は、前記クライアント・システムから前記サーバ・システムが予め受信した前記ユーザの購入者固有注文情報と対応付けて前記サーバ・システムに予めストアされていること、前記クライアント・システムで前記クライアント識別子を永続的にストアすること、アイテムを特定する情報の要求を前記サーバ・システムに送信すること、 前記アイテムを特定する情報と、前記特定されたアイテムの要求を受け付け、ストアしておくための記憶領域を示すショッピングカートの指示部分と、前記特定されたアイテムを注文するのに実行すべきシングル・アクションの指示部分とを、前記サーバ・システムから受信して、ディスプレイに表示すること、前記シングル・アクションが実行されることに応答して、前記特定されたアイテムの注文要求を、前記ショッピングカートにはストアせずに、前記クライアント識別子とともに前記サーバ・システムに送信することにより、前記サーバ・システムが、前記受信したクライアント識別子により、予めストアされた前記購入者固有注文情報を特定し、前記シングル・アクションの選択のみによって注文を完成させることであって、前記シングル・ア クションの実行により、他のアイテムについての注文であって、前記クライアント識別子 に関連付けられた1または複数の以前のシングル・アクション注文を、そのアイテムの有 用性に基づいて結合し、前記有用性は、短期間または長期間に分類され、前記短期間は、 在庫のある注文に相当し、注文要求を受けたときに出荷可能であり、前記長期間は、注文 要求を受けたときに出荷可能でない注文に相当すること、および、 前記特定されたアイテムの前記注文要求を、ある時間期間内にキャンセルするのに実行すべき指示部分を前記ディスプレイに表示すること を備えたことを特徴とする方法。

第4959817号の方も名称は「アイテムを注文するためのクライアント・システムにおける方法及び アイテムの注文を受け付けるサーバ・システムにおける方法」

【請求項1】 アイテムを注文するためのクライアント・システムにおける方法であって、 前記クライアント・システムのクライアント識別子を、前記クライアント・システムのコンピュータによりサーバ・システムから受信すること、 前記クライアント・システムで前記クライアント識別子を永続的にストアすること、 複数のアイテムの各々のアイテムについて、  前記アイテムを特定する情報と、前記特定されたアイテムを注文するのに実行すべきシングル・アクションの指示部分とを、前記クライアント・システムのディスプレイに表示することであって、前記シングル・アクションは、前記特定のアイテムの注文を完成させるために前記クライアント・システムに要求される唯一のアクションであり、前記クライアント・システムに対して前記シングル・アクションの実行に続いて前記注文の確認を要求しないこと、および  前記シングル・アクションが実行されることに応答して、前記特定されたアイテムの注文要求と前記クライアント識別子とを、前記サーバ・システムに送信することであって、前記注文要求は、前記シングル・アクションによって示されたシングル・アクション注文要求であり、前記クライアント識別子は、ユーザのアカウント情報を特定することを備え、 前記サーバ・システムが、前記シングル・アクションによって示されたシングル・アクション注文要求と、前記クライアント識別子に関連付けられた1または複数の以前のシングル・アクション注文要求とを組み合わせ、1つの注文に結合することを特徴とする方法。

この「1-Clickで今すぐ買う」ボタンを消費者が選択すると、配送や支払いの情報を都度入力する必要もなく、素早く複数の商品をグループ化して注文ができるというものが1Click特許の概要です。この仕組みはAmazonのECの購入プロセスにおいて非常に大きな役割を果たしてきました。

ECサイトにおける大きな課題として「カゴ落ち」と呼ばれるものがあります。カゴ落ちとは、商品を選んでカートに入れたものの購入処理がされず、そのまま「買い物カート」に入れられた状態で放置されることを指します。このカゴ落ちはECサイト運営者にとって非常に大きな課題となっており、ある研究によると、「カゴ落ち」率は平均して70%にも達していると言われています。従って、このカゴ落ち率を改善できる技術というのは収益に対して非常に大きなインパクトを生むのです。 Amazonの1Click特許はこの大きな問題に対して非常に大きな効力を果たしており、ある推測結果によると、Amazonの売上は5%増加されており、年間約24億ドル(約2677億円)の売り上げ増につながっているとされています。

3.ビジネスモデル特許とは?

スタートアップやITベンチャーでよく聞かれるビジネスモデル特許ですが、実はビジネスモデル自体には特許は与えられません。

なぜなら特許の要件には、「自然法則を利用した技術思想」というものがあるためであり、単なるビジネスモデルは自然法則を利用していると言えないため、特許に該当しないのです。

それでは、どういうものがビジネスモデル特許として保護されるかというと、ビジネスの方法をITを利用して実現する装置・方法に関する技術なのです。

つまり、ビジネスモデル特許とはビジネスモデル自体に直接的な独占権を与えるものではあなく、プログラミングによる処理の自動化を行ったりと、ビジネス手法において不可欠な技術的な仕組みを構成として加えた場合においては、特許で保護が可能となります。

その意味において、ビジネスモデル特許だからといって取得しても意味がない、ということはないのです。技術的な仕組みを用いている限り、権利として保護される余地は十二分にあります。

4.最近のECサイト関連の特許出願の傾向は?

例えば、2017年に楽天に対する訴訟を行い話題となった特許がありました。

特許第4598070号という特許ですが、こちらは個人の方が出願し、その後香港のエムエフピー マネジメント リミテッドに一部権利が譲渡され、共同所有の特許となっておりました。

特許の内容としては、ショッピングモールの運営者側(例えば楽天等)が設定する共通のカテゴリーと、ショップの運営者が商品ごとに設定する店舗のカテゴリーの2つのカテゴリーの概念があり、最初は共通カテゴリーで商品が表示されますが、利用者が商品を選択した際には、店舗側側が設定した店舗カテゴリーの方は商品ページに表示さえることができる、というものです。

つまり、2つのカテゴリーという概念を使い分けることができるので、店舗側が細かく商品カテゴリーを作成して、商品を分類できるようになる、という利点があります。

こちらの特許は2007年の出願になりますが、裁判ではその出願時に楽天では既にその特許の技術を公開状態で利用していたため無効であるとして主張し、その主張は認められて侵害はないものとされました。

しかしながら、仮にこの特許の有効性が認められている場合、楽天は非常に大きな損害を受けていたと思いますし、このような権利範囲の広い特許が取得される可能性がある、というのがECに関する技術では今後も起こりうるものであると考えられます。

まとめ

ECサイトの特許はまだまだ権利取得の可能性が高いものです。したがって、あたらしい技術を開発した際には、権利取得によって独占化し、楽天やAmazon,Shopfy、BASEといったショッピングプラットフォームなどに用いられると、莫大な利益へとつながる可能性もあります。

こうした技術分野での出願をお考えの方は、ぜひ一度気軽にご相談してみてください。

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石原一樹
石原一樹
Seven Rich法律事務所 代表弁護士弁理士
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