一般法務/契約書

ヤフーとアスクルに見る親子会社間における株主の権利とは

ヤフーが約45%の株式を保有するアスクル株式会社における株主総会で、アスクルの現役役員の選任決議が否決された、というニュースがありました。

(参考ニュース)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1908/02/news108.htm

「日本社会では、支配株主の持つ力は圧倒的で、(子会社のトップが)自分たちの意に沿わない場合は飛ばして(=排除して)しまうのが現実だ。本当にそれが資本の論理でいいのか」

岩田氏はこのようにコメントしている。

支配株主の持つ力とはどのようなものなのでしょうか、社長よりも強いのでしょうか。資本主義の体現である株式会社の原理とは一体どのようなものなのでしょうか。

株主の権利

会社法では、株主に保証された権利として、主として以下のものがあります。

  • 自益権
  • 共益権

このうち、自益権は、「会社からお金を受領する権利」のことで、剰余金配当などがこれにあたります。上場企業などは年間の業績に基づき配当を出すことがあります。

共益権とは、「会社の経営に参加する権利」のことをいい、議決権などがこれにあたります。上場企業の場合は、議決権行使書面などが届いて、株主総会に出席したり、書面で賛否を表明したりします。

共益権には、議決権のほか、以下のような権利も含まれています。

  • 取締役の違法行為を差し止め請求する権利
  • 株主総会で行なわれた決議の取り消しの訴えを提起する権利

株主平等原則

同じ株を持つ株主であれば、上記の自益権と共益権のいずれも保証されているという点で、「株主平等原則」といいます。この原則に従うと、特定の株主にのみ配当をしたり議決権を行使させたり、という不公平な取扱いをすることができません。

もっとも、ここでは述べませんが、種類株という制度を活用することでこの原則の例外を作ることも可能です。

所有と経営の分離

株主は、お金を出資することで会社の株式を所有しています。多数株主が社長になるケースもありますが、上場しているような会社の場合は、多数株主は外部の人間であることが多いです。

株主は、会社の重要事項を決定するほどの権利を持っていることがわかります。これは、経営に専念する者と資本を出資する者=所有する者を分ける原則を「所有と経営の分離原則」ともいいます。

会社経営する者と会社所有する者を分け考え

上場企業などにおいては株主会社所有する者であり、代表取締役会社経営する者であることが多い。代表取締役は、会社所有する者の集まりである株主総会において選任された取締役の中から選定される。所有と経営の分離は、代表取締役株主異なれば独裁的経営判断を防ぐことができ健全な経営実現できるとしている。

Weblio辞書

スタートアップ企業でも、VCやエンジェル投資家は実際に経営をしてくれるわけではありません。あくまで資金を提供して事業運営は経営者にしてもらう、という役割をしているわけです。

ヤフーとアスクルの関係

今回、ヤフーがアスクルに対して行使した権利がこの共益権です。

つまり、取締役の選任は、議決権のある株主によって決定されるものであり、過半数近くの議決権を持っているヤフーが行使したことでアスクル社長である岩田氏が選任されなかったのです。本来は過半数なくして単独で選任することはできませんが、ヤフーの意向に歩調を合わせた投資家を含めると過半数をとれるのは目に見えています。

ヤフーが主要な資本提供者で、アスクルの岩田氏は経営者という所有と経営の分離の関係において起きた事件だったのです。

まとめ

このように上場企業においても株式会社という制度における歪みが生じることがあるわけです。

上場企業よりも株主が圧倒的に少ないスタートアップでも資本政策や株主との関係とそれぞれの役割をきちんと理解した上で会社運営をしていくことが非常に重要になってきます。

特にスタートアップ企業においては、株主同士の取り決めを「株主間契約」として書面化しておくことが重要なこともわかります。