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AIは特許が取れるのか?AI特許取得のポイントと、その効力とは

AI技術が注目を集める中で、その用途は様々な分野に広がっていっています。AIは活用範囲が非常に広い技術でもあるため、特許を取得することができれば、かなりの独占的な利益が得られる可能性があります。今回は、AIの特許の取得可能性や、その取得のポイント、効力などについて解説します。

1. AI(Artificial Intelligence)とは?

AI(Artificial Intelligence)」とは、人間と同じような判断や行動の自動化が可能な人工知能のことをいいます。

AIには、「強いAI(汎用型AI)」と「弱いAI(特化型AI)」とがありますが、このうち強いAIは、人間と同等のことができることを目指したものですが、まだ開発されておらず、現状においては何かの業務などに特化した弱いAIが主流となっています。

こうした弱いAIにおいては、特定の動作や処理を学習モデルに対して大量のデータを学習させた結果、成果物としてプログラムができるようになっています。

AIの構成要素としては、

  • データ(学習用のデータセット)
  • プログラム(学習済みモデル)

であり、AI全体、及びAIのデータ・プログラムそれぞれについて、特許での保護の可能性を解説していきます。

2. 特許とは?

特許とは、ある技術を発明をした個人や法人に対して、その発明の独占権を与えてその経済的な利益を保護する制度です。
したがって、特許となるためには、以下の4つの「発明」の要件を満たす必要があります

  1. 自然法則を利用
  2. 技術的な思想
  3. 創作性
  4. 高度なもの

それでは、以上4つについて解説させていただきます。

①自然法則を利用

自然法則」とは、自然界における現象の間に成り立っている必然的・一般的な関係を示した法則のことで、科学的な法則などがこれにあたります。
一方、ゲームのルールなどは該当しません。

②技術的な思想

技術」とは、ある結果を得るための具体的な手段であり、誰が行っても同じ結果が得られるもののことです。
思想」とは、アイディアであり、単なる情報の提示は「技術的な思想」とはなりません。

③創作性

創作」とは、新しいものを作り出したり、考え出したりすることであり、すでに存在しているものを見つけ出すことは、「創作」ではなく発見です。
したがって、自然界にある物質などを発見しても特許にはなりません。

④高度なもの

高度なもの」は、実用新案法に定められている「考案」と区別するために設けられたものですが、実務的にはこの条件は審査の際には考慮されないようになっています。

以上の4つの条件に加え、特許で保護されるためには次の特許要件を満たす必要があります。

3. 特許要件として必要なものは?

繰り返しにはなりますが、「特許要件」としては、主には次の3つが挙げられます。

  1. 産業上の利用可能性
  2. 新規性
  3. 進歩

それでは、以上3つについて解説させていただきます。

①産業上の利用可能性

産業上の利用可能性」とは、産業上利用することができるかどうかであり、これに該当しないものは特許にできません。例えば病気の治療法や、純粋に数学的な定理などはこれに当たるため、特許となりません。

②新規性

新規性」とは、「新しい」ということを意味し、出願時点ですでに公然と知られている発明や書籍・インターネットなどに掲載された発明は、世間に知れ渡っているため「新規性」がありません。

③進歩性

進歩性」とは、発明が容易にはできないという意味です。技術分野が属する知識を持っている人が、既存の発明をもとにして簡単に発明することができるようなものに「進歩性」はありません。

以上のように、「発明」と「特許要件」の条件をいずれもみたしている場合、特許庁に特許の出願をし、それが認められれば特許で保護されることになります。

4. AI技術における特許の対象とは

上述したように、AI全体が特許で保護されるためには、AI全体が「発明」に該当し、産業上の利用制、新規性、進歩性という3つの特許要件をみたす必要があります。

まず、AI全体が「発明」にあたるかどうかは、AI全体の特許が、ソフトウェア、又はソフトウェアとともに動作する情報処理装置、その動作方法、ソフトウェアを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に該当するか否かで判別されます。

次に、実務上もっとも重要な判断となるのが、「進歩性」に関する部分です。AI全体に進歩性があるかどうかは、以下の点に注意して検討する必要があります。

まず、ある分野で利用されている技術と他の分野で利用されている技術とを組み合わせたり、ある分野で利用されている技術を他の分野に適用したりしても「進歩性」は満たすことができません。

これらは、技術アイデアを考えるときによく用いられている手法であり、このような形での発明は通常想定されるため、組み合わせ方や技術の適用方法において技術的に困難な事情があるといったものがない限り、この発明の「進歩性」は否定されます。

こうした基準においても「進歩性」を有すると考えられるのであれば、AIにおける発明も特許として保護される可能性はありえるということになります。

なお、AIにおける特許の構成としては、ソフトウェアとハードウェアが一体化した「情報処理装置」としてのものに加え、「プログラム」として発明が出願される場合もあり得ます。プログラム自体も、特許の対象として認められていますが、例えば、ディープラーニング型AIで用いられるニューラルネットワークの構造のようなものは、単純なプログラムと言えるようではありません。 こうしたものは、プログラムそのものだけでなく、「プログラムに準ずるもの」として特許で保護されるようになっています

さて、特許においては実は、各国で登録されれば良いというものではなく、効力を持った国それぞれごとに出願して登録を受ける必要があります
フィンテック技術のように国境をまたいで利用されるものの場合、この点はより顕著な問題となり、可能な限り多くの国で権利を確保しないと、法的な抜け穴ができてしまうリスクがあります。

5. AIの「データ」は特許による保護が可能か?

上述の通り、単なる情報の提示は「技術的な思想」とはいえず、「発明」にはあたらないとされています。

したがって、AI開発の際に使われるデータのうち、学習に用いられるデータなどは、単なる情報の提示にすぎず、発明として特許で保護されるものではありません。また、「学習済みのパラメータ」等についても同様に単なる数値データの提示であるといえるため、特許とはなりません。

しかしながら、コンピュータの処理内容を特定するデータやデータ構造は別です。これらは、コンピュータに対して直接指令を与えるわけではないため「プログラム」そのものではありませんが、「プログラムに準ずるもの」として特許で保護されることになっています

6. AIの特許の権利者は?

AIの開発においては、

①データの収集

②データの加工

③学習プログラムを作成する

④学習プログラムによってデータを学習させる

というステップが含まれています。

AIの開発においては、ユーザー企業とベンダーが共同で開発する場面も多く、各ステップには多くの人が関わるようになるため、だれが発明者となるかが重要なポイントとなります。

特許法では、「発明をした者」が特許を取得できる(=特許権者)とされており、「発明者」とは、その発明について、技術的思想の創作行為に現実に加担した人のことを指します。

したがって、例えば、AIを開発する際にアドバイスをしただけの人は「発明者」とはならず、特許権者にはなりません。また、データの収集や加工自体にも技術的思想の創作という観点からだと、発明への寄与は限定的であると考えられます。したがって、AIにおける発明者は、③の学習プログラムの作成をしたり、AIの学習モデル全体のコンセプトを考えたりした人が持つことが多いでしょう。

なお、共同で発明をして発明者が複数いる場合には、共同発明者全員を発明者として特許を出願する必要があり、これに違反すると、特許出願の拒絶理由や、特許の無効理由となってしまいます。 こうした点であとあと問題を起こさないよう、AIの技術を開発する際には、開発者や発注元の企業との間で権利関係について明確に契約書を結んでおいたほうがよいでしょう。

7. まとめ

AIの特許は、モノの形状や構造などの特許と比較した場合、構成が特殊であり、その特許性や権利の帰属にも注意が必要です。

AIにおいて特許を検討するときには、専門家の意見を聞きながら、特許可能なポイントなどを明確にしていく方がよいでしょう。

この記事の執筆・監修専門家
石原一樹
石原一樹
Seven Rich法律事務所 代表弁護士弁理士