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【上場企業決算分析】ブレインパッドの最新決算・事業内容・業績・歴史を徹底解説

株式会社ブレインパッドは、2004年に東京都で設立され、対企業向けにデータを活用した経営改善などのサポートを行う企業です。
ビッグデータ、AI、IoTなどの技術を活用して、TOYOTA、JAL、Googleなど様々な業界のリーディングカンパニーへサービスを提供しています。

ブレインパッドは、2011年にマザーズへ上場し、2013年東証1部へ市場変更を行いました。

① 決算データ

①-1 最新期の売上/売上総利益/営業利益/経常利益/当期純利益

決算年月(百万円) 20年6月(実績) 19年6月(実績) 前年比 20年6月(計画) 計画比
売上高 6,621 5,677 +16.6% 6,800 △2.6%
売上総利益 3,017 2,822 +6.9%
営業利益 1,061 1,185 △10.4% 1,200 △12.9%
経常利益 1,079 1,214 △11.2% 1,220 △13.1%
当期純利益 858 881 △2.6% 900 △4.9%

 

①-2 売上・営業利益・営業利益率の推移

以下の図は、5期にわたるブレインパッドの売上高、営業利益及び営業利益率をグラフ化したものです。2020年6月期の通期の売上高は66.2億円、営業利益は10.6億円であり、営業利益率は16.0%です。

ブレインパッド 営業利益の推移

 

①-3 連結の経営指標

2020年6月期の通期業績は以下の通りです。

  • 売上高:66.2億円(前年比+16.6%
  • 経常利益:10.8億円(前年比△12.5%
  • 当期純利益:8.6億円(前年比△2.7%
決算年月 2019年6月期
2020年6月期
売上高(百万円) 5,676 6,621
経常利益(百万円) 1,213 1,078
当期純利益(百万円) 880 857
純資産額(百万円) 2,689 4,028
総資産額(百万円) 3,867 4,983
自己資本比率 69.4% 80.8%
営業キャッシュフロー(百万円) 1,038 761
投資キャッシュフロー(百万円) △228 △242
財務キャッシュフロー(百万円) 389
現金・現金同等物の期末残高(百万円) 2,076 2,984

 

4Q業績ハイライト (2020年6月期)

以下は、2020年6月期の業績を4Qに分けた指標です。
売上高は、期末にかけて右肩上がり数値を示しています。
一方で、営業利益は必ずしも売上高と一致せず、クォーター別で最も売上の多い4Qの営業利益は四半期で最も低い値を示しています。

期間 2020年6月期
1Q
2020年6月期
2Q
2020年6月期
3Q
2020年6月期
4Q
売上高(百万円) 1,551 1,639 1,649 1,782
粗利益(百万円)
販管費(百万円)
営業利益(百万円) 314 312 255 181
従業員数 137 51 76 105

 

経営指標(過去5年分)

5期の間に売上は約2.3倍の増加を見せており、年々右肩上がりに成長をしていることがわかります。
また、利益に関しては、経常利益が4.6倍、当期純利益が8.2倍と売上高の成長率を大きく上回っています。

決算年月(百万円) 2016年6月 2017年6月 2018年6月 2019年6月 2020年6月
売上高 2,899 3,528 4,331 5,676 6,621
経常利益 230 143 596 1,213 1,078
当期純利益 105 150 406 880 857
純資産額 1,251 1,402 1,808 2,689 4,028
総資産額 1,833 1,898 2,691 3,867 4,983
自己資本比率 68.0% 73.6% 67.0% 69.4% 80.8%

 

② 事業内容

②-1 ブレインパットとは?

ブレインパッドは、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」を創業時からミッションとして掲げ、ビッグデータやAIを活用した情報分析やマーケティング支援、経営改善に関わるツールやシステム、コンサルティングサービスなどを提供する企業です。

現在、情報のデジタル化やインターネットの普及に伴い、企業には顧客やビジネスに関連したデータが数多く眠っています。また、それらのデータの中には、ビジネス課題を解決や経営の大幅な改善に繋がる有用なデータも多く存在することが考えられます。

しかし、多くの企業はそのように蓄積されたデータを持っていたとしても有効に活用することができていません。

ブレインパッドは、このようなデータを企業がより有効に活用することができるようにシステムやツール、コンサルティングサービスを提供し、企業のサポートをすることを目的とした業務を行っています。

「データ活用」という軸は存在するものの、企業や解決課題によってアプローチが異なるため、ブレインパッドでは業務目的や顧客の要望別にセグメントを3つに分けてサービス提供を行っています。

  1. アナリティクス事業
  2. ソリューション事業
  3. マーケティングプラットフォーム事業

各セグメントの立ち位置を示した図は、以下の通りです。
「人的支援」を中心としたコンサルティング系のサービスと「プロダクツ」を中心とした開発系のサービスまでを広範囲でサービス領域をカバーしている点がブレインパッドの大きな特徴です。

ブレインパッドの事業領域

 

②-2 セグメント別の事業内容/ビジネスモデル

前述した通り、ブレインパッドは、顧客企業の解決課題や要望に応じて「データ」を活用したサービスを3つのセグメントに分割して運営しています。
これから各セグメントについての詳しい解説を行います。

アナリティクス事業(分析・コンサルティング)

アナリティクス事業は、データサイエンティストと呼ばれるデータの専門家によるデータ解析やシステム実装を業務委託形式で行う事業です。
ブレインパッドは、新卒からデータサイエンティストを育成するなど、アナリティクス事業で活躍できる人材を育てるための育成に注力しています。
アナリティクス事業で行われている主なサービスは以下の通りです。

  • マーケティングアナリティクス
    マーケティングアナリティクスは、顧客のマーケティング活動を支援するサービスです。
    データサイエンティストによって企業の顧客構造を分析したり、分析によって抽出したデータをもとにマーケティング戦略の構築などを行います。
  • 機械学習やAIを用いた業務プロセスの最適化
    こちらのサービスは、企業の業務効率化や経営改善を目的としたサービスであり、AI技術などを活用して業務工程を分析し、企業の生産プロセスを最適化することを目的としています。
    このサービスの活用例は、配送・配車,人員配置、不良品の検出や歩留まりの改善などです。

  • データ活用人材の育成、組織・体制の整備
    このサービスは、自社でデータサイエンティストのようなデータ活用人材の育成を検討している企業や、自社内でデータを活用する専門チームの構築を考えている企業を対象としたサービスです。
    自社で多くのデータサイエンティストを育成してきたノウハウを応用してサービス提供を行っています。

 

ソリューション事業

ソリューション事業は、データを活用した顧客管理システム(CTM)改善やマーケティングを自動化する場合に必要となる海外製システムの販売・提案などを行う事業セグメントです。
ブレインパッドは、顧客の要望や解決したい課題などをヒアリングし、それに応じて最適なシステムを選定し顧客に提供します。
提供するツールの中には、国内でブレインパッドのみが取り扱っているものがあることや、データ分析によって培ったノウハウを選定に生かせることが、この事業セグメントの強みです。

以下は、このセグメントで提供されている代表的な製品です。

ツール一覧

マーケティングプラットフォーム事業

前述した、ソリューション事業は顧客企業に対し取り扱いツールを選定するタイプのサービスでした。
一方、マーケティングプラットフォーム事業で運営されるサービスは独自性の強い製品を自社開発して顧客へ提供するタイプのサービスです。
ブレインパッドが、データ分析を通じて取得した、高精度な自社開発アルゴリズム援用して製品化したSaaS製品を顧客へ提供しています。
また、このセグメントは、他のセグメントと比較すると相対的に売上が低く、新製品の開発や立ち上げにチャレンジするとされている為、どちらかといえば投資フェーズの事業であるという見方もできます。

このセグメントで開発された主なサービスやツールは以下の通りです。

代表的なサービス ブレインパッド

②-3 売上構成比/セグメント別の利益

売上の構成比に着目して、直近3期の売上高を見ていきます。
売上を構成するセグメントについては前述した通りです。
売上構成の比率に目立った変化は見受けられませんが、基本的にはデータサイエンティストによって運用されているアナリティクス事業が最も大きな売上構成比率を占めています。
このことから、ブレインパッドのビジネスでは、「データサイエンティスト」と呼ばれる人材が事業の中心を担う存在であることが予測できます。

売上構成比

 

また、以下の図は過去3期のセグメント別の利益の推移を表したグラフです。
売上同様、利益面でも中核をになっているのが、アナリティクス事業であることが読み取れます。
また、2020年6月期のアナリティクス事業のセグメント利益は3つのセグメントで最も高い45.2%となっています。

利益構成比

 

③ 主要KPIとその数値推移

③-1 アナリティクス事業のKPI

以下の指標は、過去6期アナリティクス事業の顧客数と売上高を示したグラフです。
2020年6月期 4Qは過去最高の売上を上げているにも関わらず、顧客数は決して多いとはいえない水準です。
このような現象は他のタームにもあり、顧客数と売上が連動していない為、顧客単価によって売上高が大きく左右されていることが予想されます。

アナリティクス事業のKPI

 

③-2 ソリューション事業のKPI

アナリティクス事業とは異なり、ソリューション事業の売上は顧客数と概ね連動しています。
また、売上そのものは期を追うごとに概ね右肩上がりです。
オレンジ色のストック型売上とは、過去に製品を提供した顧客などから経常的に獲得する売上(月額使用量、定期メンテナンスなど)を示し、フロー売上は開発や新規導入などの経常的には発生しない売上の値を示しています。

ソリューション事業のKPI

 

③-3 マーケティングプラットフォーム事業のKPI

マーケティングプラットフォーム事業も、ソリューション事業と同様に顧客数に対し売上が連動するタイプのサービスです。
この事業部ではカスタマーサクセス部門(顧客への製品導入後のアフターサービス)を新設した効果により、既存顧客の安定的な維持を生み、ストック型売上の増加につながったとされています。

マーケティングプラットフォーム事業

 

 

④ コスト構造

④-1 営業利益の推移

以下の図は、ブレインパッドの営業利益の推移と粗利益、販管費の関係性を表したグラフです。
過去5期の指標では、数値に差異はあるものの、黒字経営を続けていることがわかります。
また、2019年6月期以降は営業利益が10億円を超えており経営効率が改善されていることが数値の変化から読み取れます。

 

営業利益、粗利益、販管費

 

⑤ 投資領域

⑤-1 電通グループとの合弁会社設立

ブレインパッドは、電通との合弁会社「株式会社電通クロスブレイン」の設立に合意したことを2020年7月に発表しました。
この新会社は、企業の広告宣伝から接客に至るまでのビックデータを活用し、マーケティング面の支援を目的とする会社であり、電通グループのマーケティング戦略立案力と実行力とブレインパッドのデータ分析力を融合させることを目的として設立されました。
この合弁会社の設立に関する詳しい情報は、以下のURLを参照してください。

2020年7月に発表された電通との合弁会社設立に関する記事

⑤-2 セグメントの変更

ブレインパッドは、2020年8月の取締役会で、2021年6月期からセグメント変更を行うことを決定したと発表しました。
今回のセグメント変更では、これまで3つに分割されていたセグメントを、コンサルティング、人的支援を中心とする「プロフェッショナルサービス事業」と、プロダクトの提供を中心とする「プロダクト事業」の 2つへ報告セグメントを変更すると発表されています。
また、このセグメント変更は、セグメント相互の連携に取り組むことで、経営管理の強化と収益の最大化を目的とした変更であるとされています。

2020年8月に発表されたセグメント変更に関する記事

⑥ 株価・時価総額推移

以下の図は、ブレインパッドの株価の変化を表したグラフです。

ブレインパッドの株価

ブレインパッドの2020年7月27日時点の株価は3,925円、時価総額は289.1億円です。
2020年6月期の営業利益10.6億円に対して27.3倍の評価を受けている計算になります。

⑦ 会社情報

まずはブレインパッドの基本情報を紹介します。
市場は東証1部で、決算月は毎年6月です。

基本情報

会社名 株式会社ブレインパッド
設立日 2004年3月18日
市場 東証1部
証券コード 3655
業種 情報・通信業
決算期 6月
ホームページアドレス http://www.brainpad.co.jp/
発行済株式総数 7,366,332(株)
普通株式数 7,366,332(株)
資本金 575,000,000円 (2020/6現在)
1単元の株式数 100(株)
従業員数 303 人
平均年齢 34.7 歳
平均年収 6,977,000 円

沿革

ブレインパッドは2004年3月に東京都で設立されました。
2011年にはマザーズへの上場を果たし、翌2013年に東証1部への市場変更を行っています。

2004年3月 株式会社ブレインパッドを設立(東京都品川区西五反田)
2004年7月 データマイニング業務の受託サービスの提供開始
2006年5月 本社を移転(東京都品川区東五反田)
2006年9月 レコメンドエンジン搭載プライベートDMP「Rtoaster」を提供開始
2007年10月 財団法人日本情報処理開発協会(JIPDEC、現:一般財団法人日本情報経済社会推進協会)より、「プライバシーマーク」を取得
2010年2月 運用型広告最適化ツール「L2Mixer」を提供開始(同製品は、2019年2月にサービス終了)
2011年9月 東京証券取引所マザーズに上場
2013年7月 東京証券取引所市場第一部に市場変更
2013年8月 企業および個人向け研修プログラム「ブレインパッド 教育講座」(現・データ活用人材育成サービス)を提供開始
本社を移転(東京都港区白金台)
2013年9月 米国・カリフォルニア州にBrainPad US Inc.を設立
2013年10月 「webレコメンデーションならびに広告配信技術、データ分析技術を利用したSaaSサービスの提供」
の範囲において、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の国際規格であるISO27001の認証を取得
2015年3月 Mynd株式会社を連結子会社化
2015年10月 自然言語処理エンジン「Mynd plus」を提供開始
2018年2月 広告運用支援ツール「AdNote」を提供開始
2019年2月 AI型インターネット広告運用ソリューション「FUSE LIGHT」を提供開始
2019年4月 運用型広告入稿支援ツール「AdPencil」を提供開始
2019年7月 拡張分析ツール「BrainPad VizTact」を提供開始

 


この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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