判例

労働判例の読み方「同一労働同一賃金」【井関松山ファクトリー事件・井関松山製造所事件】松山地裁平30.4.24判決(労判1182.5、20)

0.事案の概要

 ここでは、2つの裁判例(同日に言い渡されたもの)を併せて一緒に検討します。いずれも、有期雇用契約者と無期雇用契約者の処遇の違いが労働契約法20条に違反するかどうかが争われた事件で、事案の背景となる事情も共通するところが多いからです。

1.判例のポイント

 この2つの裁判例は、61日付の2つの最高裁判例(ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件)よりも前に出されたもので、判例の影響を受けていませんが、判断基準はこの2つの判例と同様です。
 すなわち、各手当については、手当の目的と、その目的達成の手段としての合理性を、具体的に検討しています。
 他方、賞与については、「有為な人材の獲得とその定着を図る」という抽象的な理由で合理性を認めています。

2.実務上のポイント

 手当も賞与も、共に判例を先取りするもので、判例の枠組みに合致します。
 けれども、働き方改革関連法を先取りする解釈指針となる「同一労働同一賃金ガイドライン案」と比較した場合、手当部分はこれに沿った内容ですが、賞与はこれに沿ったものではありません。このことは、当ガイドライン案の立案に深く関与した水町教授自身が指摘する問題であり(労働判例715日号17頁)、言わば、裁判所の判断に対し、行政の判断や国会が成立させた法律の規定が対立しかねない、という状況です。
 したがって、同一労働同一賃金や働き方改革に関連して、諸手当の見直しを行うべきこと、特に賞与については、ルールが不安定な状況にありますので、その内容や見直しのタイミング等について、慎重に対応してください。

※ JILAの研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。
 その中から、特に気になる判例について、コメントします。

ABOUT ME
芦原 一郎
弁護士法人キャスト パートナー弁護士/NY州弁護士/証券アナリスト 東弁労働法委員会副委員長/JILA(日本組織内弁護士協会)理事 JILA芦原ゼミ、JILA労働判例ゼミ、社労士向け「芦原労判ゼミ」主宰
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この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
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